(アレルギーの症例:12)アトピーにカビが二次感染して、こじれると治り難い事があります
■ワンちゃん MIX(柴犬×ジャックラッセルテリア) 初診時10歳
■病 歴:1歳からアトピーとして治療している。食物アレルギーは不明。外耳炎もある。
■初診時:この子は冬に悪化傾向があるみたいですが、今回は春になってきて悪化してきたそうです。痒みは10段階で5、と安眠できなくなってきています。抗真菌薬・抗ヒスタミン・外用ステロイド・抗生物質と各種治療を1か月以上していますが治りません。ステロイドは興奮と多飲多尿がひどくて連用は難しいみたいです。顔は少し、手足の指間も少し発赤があるのですが、前胸部がかなり部分的に悪くなっています。 ここが治らないのが一番の悩みのご様子です。慢性経過で苔癬化し始めて、少し分厚くなっています。
↑前胸部 確かにひどいですね! ↑アップ写真
アップにすると周辺に分厚い鱗屑があり、感染が強いのかな?と思わせます。
患部には常在のカビのマラセチアが異常繁殖していましたので、抗真菌薬を投与しても基本的には間違ってはいないと思います。ですが、逆に抗真菌薬は手持ち分を飲み切って中止して頂きました。 飲んだ事はマイナスでは無いですが、現状を考えると効果的では無さそうですし、マラセチアは常在するカビで全滅は困難ですし、局所病変なので中止しても良いと判断しました。
同時に内服ではステロイドが使い辛いので、アポキルを使用しました。これは安全ですが「ステロイドよりは副作用が少ない抗炎症作用のある免疫に作用する薬」と言う説明で使っています。感染の増強も含めて副作用のリスクは有り得ますので、注意は必要です。逆に抗炎症効果が不十分なので外用薬で補助します。
部分的な治療として抗炎症療法を強化するとなると、やっぱりステロイドです。 ステロイドは副作用で内服ができないので外用薬の効力を上げました。5段階だと上から2番目の強さですが、アンテドラックと言う副作用の少ないタイプを選択しました。逆に炎症が強いので、抗真菌薬入りのシャンプーは優しいタイプで保湿をしっかりしながら使用します。局所の抗真菌薬は今回不要と判断しました。
マラセチアの関与する皮膚炎に関してはハッキリ分からない事も多いのですが、カビそのものに対してのアレルギー反応が悪化要因との報告があります。時にはカビを減らす事よりも、そのサイクルを強制的に絶つのが必要だと思っています。皮膚炎そのものが余分な皮脂を産みだしてカビが増えるサイクルが悪化させるので、カビの増殖防止にも抗炎症は大切だと思っています。
ご飯は食材の制限だけして頂きました。普段から色々と食べてしまうと、後々制限食をしたくても効果的にできません。ただ、今回は問診や症状からは食物アレルギーは余り疑ってはいません。
さて改善してくれるしょうか?1週で痒みと炎症は止まり、発毛が少し出だし、どんどん良くなりました!もちろん、しっかり投薬とスキンケアをして頂くご家族のご協力があってこそです!
写真は2か月後のものですが、ここまで来たら日々の維持療法で大丈夫です。