(アレルギーの症例:19)アトピー・アレルギーの治療には決まった方法と自己流が有ります。

ワンちゃん・シーズー・オス・初診時:1歳5か月

病 歴:
元々はアトピーとして治療をしていた子です。なんと6か月齢から・・・(当院の皮膚科診察室のページを見ている熱心な方は「ん?本当にアトピー??」となったかも知れませんね)。

ブドウ球菌のS.pseudintermedius(一番多い原因菌です)の耐性菌やマラセチアが発見され治療されたり、アトピーに多めのステロイドやアポキルを投薬したり、ヒバ油を塗ってみたり(これはトリマーさんが推奨して)・・・色々としても悪化の一途のご様子で来院されました。

お話を聞く限りは検査や投薬は結構積極的にして頂いた様に思えます。しかも皮膚科に特化している病院では有りませんが、皮膚科の得意な先生もおられる当院よりもっと大きな有名な病院です。もちろん全てに凄くしっかりした良い病院ですので、当院に来るとは思われていない様子ですが、持参された紹介状も非の打ちどころの無い素晴らしいものでした。さて何ができるか・・・。

初診時:
指間炎や外耳炎は軽度です。脇の炎症も大した事はありません。でもお腹が酷い事になっています!

お腹です。

右下腹部のアップです。

もちろん指間や耳も治療が必要ですが、下腹部の悪さはアンバランスです。

さて治療の紹介も同じ事が多くなってきて、同じ話になってきてしまう事が多いので今回はちょっと違う視点で流れを書いてみます。

実はアトピーやアレルギーには段階に合わせた治療方法があります。これは僕が考えたのではなく、2015年に世界の皮膚科の偉いトップの先生方が作ってくれたガイドラインに基づきます。段階とはすなわち急性期と慢性期です。前回の症例報告でも書きましたが、初期の治療と続ける治療とを分けて適切にスムーズに移行する事が病気の治療と維持に大切になります。 これは自分流の余地の入らないルール的な治療の流れです。

この子はもう生後6カ月から治療してすでに約1年が経過しました。さて慢性期でしょうか?

時間経過的には慢性期と言えなくも無さそうです。それに皮膚の肥厚は有りませんが、色素沈着は有ります。じゃあ慢性期でしょうか?
でも・・・この肌の真っ赤っかな様子や分泌物、急激な痒みの悪化は急性期でしょう~!と言われそうですね。じゃあ急性期でしょうか?
僕は「慢性的な持病が、感染で急速に悪化している」と考えました。つまり両方ですね。ズルい回答ですね(苦笑)。まぁでも大きく悪化したポイントはやっぱり感染だと思います。だからかなりのステロイド等の投薬が功を奏していないんだと思います。

この後は流れ的には「感染症の治療をメインにする」⇒「治りきらなかったら根本原因の(例えばアトピー)をする」のが教科書的です。感染の初期に根本原因を何とかしようと沢山のステロイドやアポキルをしたら難治になってしまう恐れがあります。今回はそうであったと考えました。

実際に治療をする場合は費用的にも教科書的な方法だけでは進められません。またまだコンセンサス(合意)が十分に固まっていない事柄も有ります。

感染症の治療では改めて培養をするかどうか?は重要で、教科書的にはマメに検査した方が良いのですが、今回は投薬歴からも経験的に有効そうな薬を先ず使えそうだと思い使用しました。その代わりに、感染症に対しての外用療法もしっかりします。 外用療法にはスキンケアと合わせて感染治療ができる製品もあるので上手に使います。
ただ、今回の場合は「それより大事なポイント」があります!それが何か?は改善後の写真で考えてみて下さい。この方針に関しては特にシーズーでは全く逆の対応をされる有名な先生もおられるのですが、正直言って僕は賛同できていません。

でもちゃんと論文などが出て「こっちがスタンダードで成績が良い!」ってなったら一瞬で変えますけどね(笑)。僕はあんまり自分流のやり方に拘りは無いです。やっぱり医療でも何でも人類の(おおげさですが)集合知が一番大切です。

と、言う事で現在のやり方ですが、頑張ってみました!ちなみに感染症でも根本の炎症そのものの治療は内服で「少し」します。ここも自分流のゾーンなので何かコンセンサスができたら変えようと思っております。ですが治療成績は悪くないと思っております。

さて3週後位で難治性の皮膚はどうなったでしょうか?

お腹です。

右下腹部のアップです。

かなり良くなりました!
その後はかなり早い発症だったので「食物関連性の皮膚症状」も疑い、食事療法を積極的に行いました。今は内服をかなり減らしてコントロールができています。 犬種的にも脂漏症も考えての継続したケアは必要ですが、もう大きな事は1年近く起きておりません。ご家族の方にはこまめに様子を看てケアして頂き感謝しております。