(腫瘍の症例:4)黒いホクロみたいなものが増えてきて盛り上がってきた場合に多いのは?
たまに「これって大丈夫です?」って言われる状態です。基本的には大丈夫ですが、この様になる事や、更に放置していると癌になる事も知っておくべき状態です。
ワンちゃん ミニチュアシュナウザー 初診時9歳齢 メス避妊済み
病歴:この子は元々皮膚も弱く、眼もブドウ膜炎や白内障もあり、5年前位には大学病院の先生にも相談する位の珍しい「歯根嚢胞」が発生した子です(無事切除)。それだけに常に大切に丁寧に観察して頂き、約2年前に写真の病変にも早く気が付きました。
右手の肘の内側です。
皮膚の弱い子なのでうっかりすると「ここは擦れて色素沈着(色がつく事)するんだよね~」で終わってしまう事があるかも知れません。また逆に「何でも無いよ!ホクロみたいなもの!」って言われてしまうかも知れません。 でもちょっと見た目が違います。やっぱり2か月後、胸にも広がっています。
さてどうなるのか・・・特に犬種からも気を付ける必要があります。 でも幸い急激な悪化は無く、2年が経ちました。
どうも最初から広がっているのですが、何より気になるのは肘の部分は立体的に隆起している事です。この様な色素性斑(局面)は実際にホクロである事も多いですが、人間だと悪性黒色腫との鑑別が大事になります。
犬では皮膚の黒色腫はそんなに悪くないですが、扁平上皮癌と言う悪性の腫瘍になってしまう事があります。 ですので、この様な場合は躊躇せずに切除すべきです。
今回はウイルス性色素性内反性乳頭腫と呼ばれるもので悪性ではありませんでした!良かったです。これはパピローマウイルスによって起こる腫瘍でミニチュアシュナウザーやパグ・シャーペイなど色々な犬種では報告されていますが、稀な部類に入ります。
また、ミニチュアシュナウザーでは遺伝的な素因が病態機序に関連していると考えられています。
今回は良性でしたが、前述の様に扁平上皮癌への悪性転換が起こる事があるので、まだまだこの先も要注意です。
レーザーや凍結療法で全て消していくのも1つですし、報告のある抗生剤・抗癌剤・ビタミン療法等を試すのも1つです。今回は一番マイルドに対応ができるサプリをご提案しました。
現在少し黒い部分が減ってきたかな?と思っているのですが、たとえ消えてくれなくても、今回の様に盛り上がった変化をしなければ良いと思っています。