(アレルギーの症例:3)なかなか証明が難しいですが、恐らく食物アレルギーの子
アレルギーみたいな症状だと、食事が原因だと考える事も多いでしょう。実際にそれが一因になっている事は多く、非季節性の痒みには5割弱で食物アレルギーがあると言う論文もあります。ただ実は食事単独で起こっている事は多くはありません。それに食物アレルギーと違って、免疫が関係していない食物不耐性も有ります(まとめて食物有害反応とざっくり呼んでいる場合もあります)。更に二次的な感染で主因が分からなくなっている事も有るので、食事が原因かの診断は時間が掛かったり難しい事も多いです。
■犬 初診時4歳5か月 フレンチブルドッグ オス
■病 歴:生後2か月齢から皮膚が悪い 腸の症状も多い ステロイド・抗菌薬等を常用しているが難治
■初来院時:特に頭部ですが全身が酷い膿皮症でブツブツと脱毛で可哀想な状態でした。外耳炎も酷いです。
とりあえずはスキンケアと抗菌剤等でコントロールをしてみます。・・・ちゃんと反応はしてくれます。しかしやっぱりすぐに悪化・再発してしまいます。
通常は診断に必須で無く、値段が高い事も有り最初からアレルギー検査をしませんが、
今回は
*冬にも起こる通年の再発性のかゆみと膿皮
*ステロイドが著効では無い
*1歳以下の早い時期からの症状がある(逆に高齢で急に出るパターンもある)
*消化器症状がある(基本的には食物アレルギーの10~15%で必発では無い)
*頭と腰で症状が強い(これは関係無いと言う先生もおられます)
等が有るので、早めに食物アレルギーに関して一番信頼性がおけると言われる血液検査をしました。
ちなみに検査機関によっては「理論的に信頼できる訳が無い検査」「検証によって否定論文が有る検査」も有りますので、
信頼できる所で検査をする事が大切です。
(今回した検査でも信頼性に対する異論もあり、精度は80%程度とは思った方が良いです)。
結果、この子は小麦に強い反応があり、豚肉・鶏肉・魚・米…と色々なモノに反応がありました。
検査結果は食物同士の交差反応も考慮しなくてはならないので、結果から食事を決めるのは時に大変です。
その場合はどうするのか?は色々と手があるのですが、とりあえず今回この子に関しては幸いにもある会社の新製品が非常に適合していそうでした。
どこかに書いたかも知れない事を改めて書きますが「アレルギーを起こさない食事」と言うのは残念ながら存在しません。ただし「その子に合った食事」「アレルギーを起こし難い食事(アミノ酸食)」は有ります。ですから色んな相談をしながら、反応を見て決めていくしか有りません。ただ、食事だけで治らなくても、皮膚用の食事には皮膚に良い成分が沢山含まれていて、無駄には成らないので可能なら皮膚用の食事をお勧めします。
早速食事を変更してみます。皮膚への食事の反応は早いと2週間以内で分かりますが、遅いと2か月以上かかる事を念頭にコツコツ続けなければなりません。また、主食以外の一切の食事を一切しない事も大切です。
それから半年以上経ちますが、来院まで4年以上ずっと悩んだお肌のトラブルは消失し、今では普通に洗う位で食事だけで綺麗なお肌を維持してくれています!もちろん本当に食事が原因だったのかは「負荷試験」と言って原因と思われるものを再投与して悪化するのを確かめないとダメなんですが・・・そんな可哀想な事は論文を書くのでも無ければ意味は無いのでしておりません(笑)。この様に食事だけで治ってくれると本当に嬉しいので、少しでも食物アレルギー(有害反応)の可能性があれば、食事変更にチャレンジする意義は大きいと言えるでしょう。