(アレルギーの症例:7)今後も注意の敏感体質のワンちゃん

■ワンちゃん ミニチュアピンシャー 初診時2歳1か月
■病 歴:初年度に混合ワクチン時にアレルギーを発症している。
■初診時:1週前に頭部を中心にブツブツ(水泡?)と赤みが発生したそうです。他院で治療をしたが、治らずに昨夜は夜動物救急病院に駆け込んだとの事です。思い当る事は無いそうですが、夜間 病院では水疱も伴っており、かつ初期治療に対する反応が悪かったので、夜間病院の先生は特殊な自己免疫性疾患も考えたそうです。


↑胸                          ↑耳

少しフケ症ですが、元々の皮膚はそれほど悪くなさそうです。全身は改善しているそうです。


↑頭部

ですが、頭部に関しては症状が重く、これでも現在の治療で改善はしてくれているそうですが、かなり痛々しい状態です。1週間経過後も治らない事は病気や治療方法に再考が必要な状態と言えます。症状は全盛時もそれほど痒みが強く無かった事、水疱が有った事、急に発症した事、投薬への反応が悪かった事、そして院内の検査で皮膚の表面に異常な量の好酸球を認めた事が特徴です。

さてこの子の原因は何でしょう?何故薬が効かなかったのでしょう??
まず混合ワクチン時にアレルギーが起きたからと言って、アレルギーとは言えませんが色んなモノに過敏な体質である可能性は否定できません。発症が急である事は何かへの反応を疑わせます。今回の症状の発端は分かりませんが、食事や環境を含め徹底的な問診をして、まず原因を除外しなくてはなりません。何故ならアレルギーは原因を除外すれば治るからです。今回は観葉植物の石等も怪しかったので早速除去して頂きました。身体を洗う事は治療としても原因除去としても一石二鳥ですので、しっかりして頂きます。

好酸球の出現はアレルギーでも有りますが、虫刺され等でもよく認められます。ですので蚊はもちろんの事、予防・駆除剤を使って徹底的に虫に刺されない環境を作って頂きました。 その土台の上で薬を考えて処方します。原因を考えて除去する事はアレルギーを疑うなら特に大事です。
実は前の病院での抗菌薬とステロイドの種類は一般的でしたが、なぜか投与量が半分くらいでした・・・これでは効くはずがありません。
さらに自己免疫疾患なら、少ない量のステロイドは一切効きません。ステロイドの使用法を修正すると共に、抗菌剤には免疫調整作用のあるタイプを選択しました。

さてこの子は本当に自己免疫性疾患でしょうか?症状が強い時から痒みがそうでもない、と言うアンバランスさ、水疱の出現、低用量であれステロイドがイマイチ効かない事は確かに怪しいです。ただ当院に来た時には水疱が確認できなかったのですが、どうも見た感じは違います。何しろ水疱を形成する自己免疫性疾患はかなり重症です。全身疾患が有ったり、粘膜も潰瘍が重度だったりします。もちろん皮膚病理検査をする事でしか分かりませんが、今回は可能性が低いと考えました。

ですので、ステロイドは量も自己免疫疾患を抑える程は使わず早めに減らしていきました。ただし段階的に様子を見ながらカットしていきます。どんどん良くなって20日後です。

もう大丈夫です!
その後投薬無しで1年以上再発が有りません。やはり難治性の自己免疫性疾患では無さそうです。
ただこの子はその後の狂犬病注射でアレルギーが発生しました!やっぱり過敏体質みたいですので、今後も色んなモノに触れたり摂取する事には注意が必要そうです。