(アレルギーの症例:8)アレルギー治療をすごく頑張り過ぎた結果、難治性になってしまっていました…。

■柴犬 初診時9歳2か月 オス
■病歴:4年前からアレルギーとの事で治療。痒みが強く、アポキルと言うステロイドに代わるアトピー性 皮膚炎の新薬もしっかりと使用しています。 スキンケアもして食事も変更して、塗り薬も1日2回4年間塗り続けているそうです。 確かに総合的には犬アトピー性皮膚炎でしょうが、さてどうこじれているのでしょう・・・。


股の所が赤くなっています。


アップにすると・・・?

何か白い塊みたいなのが複数有って、何だか変な感じに見えます。周囲は炎症で赤いのですが、単純に赤いと言うよりは皮膚が薄くなって下が見えている感じも有ります。ご家族の方はこれが更に心配で頑張って外用薬を塗っておられるご様子です(獣医さんが指示しているので当然なのですが・・・)。

塗っている外用薬はストロングのランク(5段階中3番目の強さ)のステロイドでした。これを腹部に広範に1日2回4年・・・最強クラスのステロイドでなくても危険そのものです。まずは皮膚が薄くなったり、破れたり出血し易くなったり、フケが増えたり、そして写真の様に面皰と呼ばれる角質(フケ)が詰まった膨らみ(白黒両方有ります)ができたり・・・。

残念な事に、今はアトピーとか感染とかでは無く、典型的なステロイド皮膚症の状態になっています。

更に危険は外側だけでは有りません。これだけ強いステロイドを大量に吸収し易い所に長期間連日2回も塗っていれば、ステロイドの経皮吸収だけで全身的な副作用が発生します。実際にこの子はステロイドを飲んでいないにも関わらず、しっかりとステロイドの副作用を示す血液検査異常が出ていました。

直ちにステロイドを止めて・・・と言いたい所ですが、やはり急にカットする事の悪影響も有りますので、漸減していきました。同時にアトピーなのは間違いが無さそうですので、その全身的な投薬や食事療法による治療、そしてスキンケアをしっかりと行います。特にステロイド皮膚症になった部分を集中的に・・・。

早く治って欲しいですが、ステロイド皮膚症の改善には2~3か月以上の時間が必要です。

3か月経ちましたが、経過が長く、あと一息ですね!

更に1か月経ちました! 色素沈着はありますがアトピー性皮膚炎の管理としても十分満足いく状態です!ちなみに今はアポキルも止めて、軽いかゆみ止めとスキンケアと食事療法で維持して頂いています。これも熱心なご家族のお手入れの賜物です。

ちなみにステロイドの外用薬は当院でも普通に使っており、そのタイプ・量・期間を適切に使えば非常に有効です(ヒトではアトピーのメインの治療薬です)。塗り続ける事も悪くは無く、プロアクティブ療法と言って一見治っていても週2回継続的に使用する事は有意に再発防止になる事が証明されています。