(ホルモン性の症例:4)単なる湿疹?腫瘍??実はホルモンの病気から!
ワンちゃん・ミックス・オス・初病診察時17歳
病歴:膿皮症・乳腺腫瘍(良性)・老人性特発性前庭疾患・肝不全
初病診察時
肝数値が上昇し(特にALPと呼ばれる酵素は基準値が49~298のところ、外部検査機関でも測定限界以上の2万以上)
胆嚢に疾患は有るものの高齢で皮下点滴を受けている子でした。元々皮膚は弱い子ですが、急に右側頭部の部分で赤い所が認められました。
痛々しいですね・・・
よく探すと左のオデコにも有ります。赤いと炎症が有って皮膚炎である事が多いです。
多いのは細菌感染ですし、この子は小さい時から皮膚も弱く有り得ますが・・・
これは感染で多い表皮小環とは異なり少し立体的で隆起しています。これを局面と言います。
他にできたては無いか?と更に探すと、左の脇に有りました!
どうも最初は白いのかな・・・?
これは知っている人なら疑うべき状態は基本的には1つです。
皮膚の石灰化です。早速皮膚の一部を生検して確定診断を取ります。
やはり皮膚の石灰化でした!真皮膠原線維で石灰化が起こり、それに対して異物反応が起こる為に肉芽腫性炎症を呈していました。それで白くなった後に段々と赤くなります。最終的に病変部が脱落して酷い潰瘍が全身に発生するので辛い状態になります。
皮膚の石灰化を起こす原因には「副腎皮質機能亢進症(クッシング病)」「慢性腎不全(カルシウムとリンの代謝が関与)」「糖尿病などに併発する退行性カルシウム沈着」「原因不明の本態性」「腫瘍」などが考えられますが、圧倒的に前の2つが多いです。
この子は実はお腹の張った独特の体型・ALPをメインとする血液検査異常・超音波での副腎の大きさ等から副腎皮質機能亢進症の疑いをもって各種検査を何度もしていましたが、なかなか「異常です!」とハッキリ言える結果にならずにいました。費用的な負担も有る特殊な検査ですが、これだけ症状が出れば再検査をするしか有りません。結果、今回は副腎皮質機能亢進症でした。この様に時間の経過で病気がハッキリする事も有ります。
現在、皮膚の炎症はコントロールされ新しい病変の出現は抑えられていますが、
リスクの高い手術をしなくては根本的に治る病気では無いので内服・外用でコツコツ治療中です。