(ホルモン性の症例:3)ホルモン性じゃない?と思ったけど、やっぱりホルモン性だったフェレットさんの脱毛

■フェレットさん・去勢オス・推定5歳位

■初診時〜
珍しく山で保護されたフェレットさんですが、その後予防もバッチリで問題有りませんでした。年齢的には不詳ですが、そんなに高齢では無い状態で保護された子です。

保護して1年半位で少しずつ尾の毛が薄くなってきました。段々と背中にも広がりだします。同時に肝数値が激しく上昇してきました。



皮膚の検査では何も著変は無く、痒みは酷くは有りません。たまにブツブツができますが、抗生剤をして、それは消失しても脱毛は治りません。脱毛パターンで言えば偽クッシングと呼ばれるフェレットさんのホルモン病(性ホルモンの異常:フェレットさんは基本的に不妊手術をしていますが、早期に不妊する事によって発生するとも言われます)を疑います。ただし、肝数値の異常が同じホルモンからか・・・?です。可能性としては有り得ますが、報告を読んだ事はありません。

逆に肝臓病で全身に皮膚症状が出て脱毛する事もあります。珍しいですが犬で有名な肝皮膚症候群等です。ですが、症状も違いますし、この子の肝機能自体は問題無く元気です。

ではやはり性ホルモン異常→皮膚症状そして肝数値異常か?と検査を始めますが・・・。

多くの性ホルモン異常の発生源になる副腎をエコー検査しても、全く問題は有りません。
フェレットの副腎は小さいので見逃しも有り得るので、高いですが特殊な性ホルモンを一括して血液検査してみました。・・・が、フェレットでセットで調べてくれる主要な性ホルモンのエストラジオール・デヒドロエピアンドロステロン・アンドロステンジオン・17αヒドロキシプロゲステロンは、何も問題有りません!フェレットさんの場合は犬で有効なACTH検査と言うのも余り有効ではありません。こうなると診断を付けるのは非常に難しくなります。

それでも何か調べられない性ホルモン絡みじゃ無いのかな・・・?と言う事で、特に害が無く費用も掛からないで性ホルモンを始めとした脱毛症に有効な内服を始めました。しかし更に脱毛はどんどんと進行し、肝数値も少しマシになる程度です。



その内に尾はしっかり生えました!・・・が、今度は上に広がっていきます。毛色も薄い?
下の写真は尾の付け根ですが、段々と首元も脱毛して今度は体幹が全体にはげてきました。



そこで継続的にホルモンを抑える注射を打つ事にしました。これは人用をまとめ買いして一気に冷凍保存して1か月毎に打っていくので、その最初の負担を御了承して頂く必要があります。さて注射の反応は・・・?

  ※共に左側が頭側です。

注射したとたんに、一気にフサフサになって、なんと毛色も変わりました!
フェレットさんの偽クッシングは何らかの性ホルモンが過剰に分泌される事が関与している謎の病気疑いなのを再認識しました。しかし肝数値は一時よりは落ち着いたものの、まだ高値ですので、その辺は要注意です。それに注射は継続して一生打つ必要があります。