(免疫介在性疾患・自己免疫性疾患の症例:3)3歳からアレルギーと思ってインターフェロンやステロイドの投薬をしていたけど

■ワンちゃん イングリッシュコッカースパニエル 初診時10歳 オス
■病歴:3歳から犬アトピー性皮膚炎として治療をしている。
   インターフェロン療法までしたが、ステロイドの効果もイマイチになってきた。
   様々な抗生物質や抗真菌薬で感染の治療をしている状態。
■来院時:非常に悪化した状態でした。素晴らしいオーナーさんで、薬もサプリも全力で色々とされてきておられます。ですが、耳は感染して膿でベトベトで、身体全体に凄い数の膿皮(ブツブツ)があります。足は歩けるのが不思議な位に腫れあがっています。本当に可哀想な状態です・・・。

   
早速色々な検査をしました。他の症例でも出ています「ニキビダニ(毛包虫)」が異常な数で認められました。もちろん悪化の原因の1つでしょうが、ステロイド多用の他にも、根本的には更に何かありそうです。根本原因が何であれ、まずはステロイドを減量し、駆虫をしっかりとします。
 
 
耳の膿には耐性菌が多量にいて、もはや何の薬も無効だと言う結果でした。
こういう場合は新しい特殊な薬を探すよりは、ひたすら洗い続けるのが一番です。
少し気になるのは膿の中に「棘融解細胞」と言う特殊な細胞が出ている事です。
この場合はアレルギーで無く、「落葉状天疱瘡」と言う自己免疫性の疾患の心配があります。
ですが、棘融解細胞は酷い感染の場合も出たりもしますので、まずはそちらのコントロールが大切になってきます。
ニキビダニは激減し、皮膚症状も手を中心にかなり治まり、耳の化膿も減り、全体に良い感じになってきました。ですが、スッキリとは治りません。
感染のコントロールができているにも関わらず、ステロイドをほとんど切った状態になった時点で、急激に悪化してきました・・・全身にかなり大きな膿皮(ブツブツ)ができました。以前の「棘融解細胞」も気になったので、至急ですが皮膚生検をお願いしました。
 
「落葉状天疱瘡」でした!この病気は外の抗原に対して免疫が反応するアレルギーとは違って、自分で自分の皮膚そのものを敵だと思って攻撃するやっかいな自己免疫疾患です。強力な免疫抑制療法が必要になります。例えば通常のアレルギーに対してのステロイド量の4~8倍の投薬が必要になる事があります。身体の副作用の他に、制御できた菌やニキビダニの感染の悪化が要注意です。この様な疾患は診断よりもむしろ治療において技量とコミュニケーション力が問われると思っています。
大量のステロイドで劇的に良くなりました!非常に熱心なオーナー様で、副作用を減らす為に検査や他剤の併用などもしっかりとして頂き、感謝しております。