(腫瘍の症例:2)再発性の皮角を伴った漏斗部角化性棘細胞腫
変わった腫瘍で論文を書いたものなのでご紹介します。
■ワンちゃん 初診時12歳齢 オス
■病歴:2年9ヶ月前に左腰部の直径約3cmの表皮嚢胞(おできみたいなもの)が破裂し感染を起こした部に、約1年前より爪状の突起物が発生しだした。一度抜き取るが約1年かけて、約2cmに再成長してきた為に来院した。
突起物は爪状で皮角(組織的には爪そのものと言っても良いです)と思われ、その基部に直径約1㎝のしこりを切除し病理検査に出しました。
病理組織学的に、最初は高分化型扁平上皮癌と診断されて心配しましたが、複数の病理医で検討して頂いた結果、最終的に漏斗部角化性棘細胞腫(IKA)と診断されました。
その後再発はありませんでした。悪性かな?と思っても病理医の診断でも意見が分かれる事があるので妥協しないで調べる事が大切だと思いました。
今回、皮角発生前に表皮嚢胞の破裂と感染があったが、IKAにおいては嚢が崩壊する事で化膿性肉芽腫性または慢性化膿性炎症が生じる事は比較的よく観察されます。
これは腰、なんです。どうみても爪ですよね。