(腫瘍の症例:7)こんなに大きい形成術は初めてでした。なので初めて知った事が・・・
ワンちゃん ミックス犬 腫瘍発生時14歳5か月 去勢雄
病歴:
右肩後部にできた腫瘍が急速に大きくなっています。細胞診断の結果は悪性で切除が必要ですが・・・。
さすがに大き過ぎます!!
あれよあれよと言う間に大きくなってしまいました。高齢ですが、取る必要があります。しかし普通に取ってしまっては縫い合わせる皮膚が全く足りません。小さな部位では形成手術で何とかできなくても、二次癒合で自然に収縮するのを待つのも選択肢の一つですが(腫瘍の症例:1)、さすがに無理です。幸いにも高校時代からの友人がヒトの形成外科の准教授なのでご指導を受けて、次の様な計画を立てました。
※リアルになると生々しいので簡単に描いていますが、本当は血管の走行や、皮弁(切って剥離した皮膚の弁)の縦横の比率・角度、切り取る深さ等々の細かい検討が必要です。模型も作って何回もシミュレーションをしました。 ①と②が切り取った皮弁の部分で、それを⇒の方向に移動して空いた穴を埋めます。
絵で描くと簡単に見えますが・・・胴体部の半分の皮を剥いでつなぎ合わせる手術は凄く緊張しました。「これでつながらなくて全部剥がれてしまったらどうしよう・・・」何度も夢を見ました。もうしたくないです(苦笑)
一見何とかなったようですが・・・
残念ながら絵で言うと②の皮弁を作る時に少し怖くなったのか、きっと幅が狭かったのだと思います。先の血行が悪くなってしまいました。結果として、この一番先の色の悪い所は少し脱落してしまいます。
しかし、ご家族の皆様と頑張った結果!
こんなに綺麗に!
それから2年、局所再発の危険性が高い「血管周皮腫」でしたが、無事に再発もせずに順調だったのですが高齢化に伴って腎不全になって皮下点滴をしだしてビックリする事がありました。
なんと、皮下点滴をしだしたら移植した右側が腫れて同じような巨大なしこりが!!
再発か!?と冷や冷やしましたが、検査の結果は・・・この移植した皮膚の部分で点滴液の皮下吸収が上手にできなくて、脂肪織炎を起こしたのでした。再発でなくてホッとしましたが、長い年月が経って一見問題なく見えても、大手術の後は見えない変化が残っているんだな~と非常に勉強になりました。
この子は優しいご家族に本当に大切にされて、大きなワンちゃんですが非常に長寿で幸せな子です。