(アレルギーの症例:18)食事アレルギーとあと2つは多いですね~。
ワンちゃん・MIX・避妊メス・初診時:5歳7か月
病 歴:
生後7~8か月から顔の症状が出始め、それが手足に広がったそうです。アレルギー検査を駆使して様々な治療をして、更には獣医さん特製の色んなフードやシャンプー・保湿もしていますが改善しない為に来院されました。
いつも共通して想うのですが、凄く頑張ってして下さって転院されている方は病歴や処方歴の把握とまとめも頑張られている方が多くて助かります!
その頑張っていた歴史と現状を見ると「頑張らねば!」と気が引き締まります。
初診時:
かなり酷いですね・・・。
お尻です。
下腹部です。
右手です。
左手です。
左頬です(お顔だしを防ぐ為ギリギリショットです)ちなみに右頬も同じ状態です。
いずれも基本的には皮膚が肥厚して脱毛して「象皮」の状態になっています。そして少し赤くなって分泌物が付着していますので何かが感染している感じがします。 パターン的にはプードルさんで多い状態で、この子もMIX犬さんですがプードルの遺伝子が入っています。
問診からは「食事・検査・お手入れ・内服・・・」と、できる限りの事をされていると感じます。ただ信頼できるアレルギー検査をちゃんとして頂いているのに(信頼するに値しない検査もあります)、オーガニックやナチュラルや手作りのキーワードに拘り過ぎて結果が活かせていない面がありました。 それは非常に勿体ないな~と思ったので、他院でした結果に基づいてお話ししながら変えられる事を一緒に考えてみました。
別の子でも書かせて頂きましたが、とにかく食事が原因か?は食事を変えて実際の効果をみるしかありません。 ポイントは色々と有りますが「基本的には100%変える」「今食べている食材と全く違う食材にする」「可能なら過去の食材とも変える」「似た種類の食材での交差反応を考える」「最初の症状はちゃんと投薬で抑える」 等があります。ちなみに現在一番良いと言われているアレルギーの検査でも「結果はあくまで参考程度」です。
ただ言うは易く行うは難し・・・教科書的に皆が思った通りに反応するのか?簡単に食事を変えれるのか(それも100%)?食事も関係しているとして食事だけが原因なのか(併発も多い)? など、色んな要素で非常に難しくなる事があります。
こういう時に「あくまで参考」のアレルギー検査結果が的を絞る1つの指針になる事があります。この子の場合は「小麦に反応が強いから、アレルゲン蛋白のプロフィリンでアミノ酸配列の一致率が85%のトウモロコシは注意した方が良いかな・・・」とかマニアな事も考えてみたりもします。 そうやって「恐らくこの子に一番合うだろう食事」を決定します。
でも・・・そもそもこの子は食事がらみが原因なのでしょうか? この点はアトピー性皮膚炎と食事アレルギーの見た目の鑑別はできないと言う論文が有りますが、確かに見た目での判断は厳しいです(外耳炎が多いとか、背部や肛門周りに症状が多いとか、口周りに症状が多いと言う方もおられます)。 その他には「痒みの程度」「ステロイド等の薬への反応性」「季節性の有無」「消化器症状の存在」「発症年齢」等が参考になります。 論文レベルでは無いですが、自分的にはコレが一番大事で次はコレかな・・・と言うのは経験として増えてきましたが、最終的にはこの一言です。
「まぁまだちゃんと食事変更の効果を確認して無かったらやってみましょう!」
とにかく「食材をセレクトしたり」「少しでも制限したり」可能な範囲からスタートして頂いています。 何事もゼロか100か?では損する事も有りますからね。
でもこの子の場合では「問診」「アレルギー検査結果」「サンプルの嗜好性」「ご家族のこだわり」・・・色々と勘案して凄く良いフードを決めれました! 現在の食事は相当高価だったみたいなので勿体無いんですが1~2週の移行期に上手に使って頂いて変更しました。
でも!食事と同時にこの子には大切な事が有ります。
マラセチア(酵母菌)と脂漏症のコントロールです!マラセチアに関しては基本的には教科書通りにしたら良いのですが、基礎疾患を治さないとコントロールが不良になります。 この子の場合には食事は大事な要因だとは思いましたが、脂漏症のコントロールは同時に非常に大切です。
薬用シャンプー・保湿剤・外用ステロイドをベースにしつつ、他に何をするか?
そこは単なる教科書的なエビデンスだけでなく自分で考えたポイントがあるのですが、エビデンス(証拠)の無い事を書くのは批判も来そうですし割愛します。
とにかくアトピーだけでなく何事も「ごく初期だけの治療」と「ずっと続ける治療」に分けて必要な事を役割分担で「内服」も行っています。 それができるかどうか?は性格や相性や血液検査結果等にもよるのですが、大体のご家族や患者さんは余裕で可能です。
昔は「できるだけ外用だけでいきたいな~する事を減らしてあげたいし・・・」と思っていたのですが、やっぱりそれでは一定以上の改善が難しい子が出るなぁ~と思うので、最近は積極的に内服系もおススメしています。 とは言っても、危険性も費用も高い事は全くありません。皮膚科を得意と標榜しておいて何ですが、危険性が高い事や費用が高い事をずっとしてまで維持しなくてはならない状態は身体や経済的な負担になると思うので可能な限り配慮しております。
と、言う事でこの子はステロイドも極々少量でアポキルもサイトポイントもしないでドンドン回復して2か月後・・・
お尻です。
下腹部です。
右手です。
左手です。
右頬です。左頬も同じ位に回復しました!
顔はどうしてもお手入れが難しいので少し症状はありますが、かなり改善してくれました!ご家族も別人(犬)の様だと喜んでくれています。 もちろん痒みは殆どありませんし、極々少量だけ使用しているステロイドは更に漸減して完全カットを目指したいと思っています。 今回はご飯がバッチリ適合した面も有りますが、かなり好調で嬉しい限りです。最初のカウンセリングやお手入れ・投薬は大変だったと思いますが、協力して下さったご家族には感謝しかありません。 健康に気を付けながら、手間をドンドンと減らしながら、ご一緒に更なる改善を目指したいと思っています。