(免疫介在性疾患・自己免疫性疾患の症例:6)多形紅斑の疑いの猫さん、でも原因は?薬疹?感染?
■ネコちゃん 雑種 初診年齢13歳10か月 去勢オス
■病歴:既往歴は尿のシュウ酸カルシウム結晶と結石、GPTの上昇・甲状腺機能亢進症
目ヤニや顎の横の赤さなどから鼻汁・元気食欲の低下・口内炎・・・と風邪の様な症状を呈してきました。最初は対症療法をしていましたが、非常に悪化が著しく口腔内の潰瘍が強く出ました。血液検査やレントゲンや超音波等の各種検査の結果、自己免疫性疾患ではないか?との疑いで、途中からステロイドの投与を始めました。
痛々しいですね・・・。
ところが口の潰瘍は治ったものの、暫くして全身に著しいフケやカサブタを伴う脱毛が出現しました!麻酔を不要とする検査は普通の血液検査に加えて「ウイルス」「抗核抗体(全身性の自己免疫性疾患の検査)」等も色々としていましたが、まだ皮膚生検はしていませんでしたので、一度ステロイドを休薬して生検を行う事にしました。
右の頚部です
こんなに酷いですが、意外と痒がりません。これも特徴の一つでした。 休薬中には真菌培養で生えた雑菌と思われれる真菌に対しての投薬もしましたが、反応は有りませんでした。さて病理検査結果は・・・。 「重度の層状角化亢進と角化細胞のアポトーシスを伴う、びまん性リンパ球性皮膚炎」 「グロコット染色で真菌検出されず」でした。
分厚く大きなフケが大量に出る剥脱性皮膚炎はネコでは胸腺腫関連性剥脱性皮膚炎が有名ですが、他にも鑑別疾患は各種感染症・過敏性皮膚炎・腫瘍随伴性表皮剥離性皮膚炎・皮脂腺炎・副腎皮質機能亢進症・全身性エリテマトーデス(SLE)・剥脱性皮膚エリテマトーデス(ECLE)・多形紅斑(EM)・リンパ腫等が有りますが、今回の「胸腺腫非関連性剥脱性皮膚炎」は臨床症状・各種検査結果・投薬への反応・病理結果からは自己免疫性疾患の一つである多形紅斑(EM)もしくはスティーブンジョンソン症候群(SJS)が一番疑わしいと考えました。
この様に僕らは細かく色々と考えるのですが、まぁ実際は自己免疫性疾患だと分かれば、その中での細かい分類は治療には余り関係無く結局ステロイド等の大量投与など免疫抑制療法が中心になります。ただ、病気によっては非常に治療の反応が悪い事が有りますので、予後・投薬方法や期間を知る上では検査は重要になります。
更に自己免疫性なら原因が何か有るのか?が問題です。この子の場合は外出して帰ってからの風邪っぽい感染症状がきっかけでEMが出た感じでしたが(人のEMの原因ではヘルペスは非常に多いのですが、猫ではヘルペスウイルスの関与は現在の所は疑う報告は有っても証明されていません)、甲状腺機能亢進症に投薬しているお薬への副作用による薬疹からのEMも考えられます(今までの経験上はこの場合は非常に痒がるし口腔内病変は少ないのですが世界的な皮膚科専門医のデボア先生に聞くと疑わしいそうです)。
原因が有りハッキリしている場合は原因が治ったり取り除かれたりすると幸いにも治癒する事も多いのですが、この子も割と短期間の投与で治ってくれました。きっとどちらかが引き金になったのでしょう。でも原因が不明なので今後の再発には注意が必要です!
■病歴:既往歴は尿のシュウ酸カルシウム結晶と結石、GPTの上昇・甲状腺機能亢進症
目ヤニや顎の横の赤さなどから鼻汁・元気食欲の低下・口内炎・・・と風邪の様な症状を呈してきました。最初は対症療法をしていましたが、非常に悪化が著しく口腔内の潰瘍が強く出ました。血液検査やレントゲンや超音波等の各種検査の結果、自己免疫性疾患ではないか?との疑いで、途中からステロイドの投与を始めました。
痛々しいですね・・・。
ところが口の潰瘍は治ったものの、暫くして全身に著しいフケやカサブタを伴う脱毛が出現しました!麻酔を不要とする検査は普通の血液検査に加えて「ウイルス」「抗核抗体(全身性の自己免疫性疾患の検査)」等も色々としていましたが、まだ皮膚生検はしていませんでしたので、一度ステロイドを休薬して生検を行う事にしました。
右の頚部です
こんなに酷いですが、意外と痒がりません。これも特徴の一つでした。 休薬中には真菌培養で生えた雑菌と思われれる真菌に対しての投薬もしましたが、反応は有りませんでした。さて病理検査結果は・・・。 「重度の層状角化亢進と角化細胞のアポトーシスを伴う、びまん性リンパ球性皮膚炎」 「グロコット染色で真菌検出されず」でした。
分厚く大きなフケが大量に出る剥脱性皮膚炎はネコでは胸腺腫関連性剥脱性皮膚炎が有名ですが、他にも鑑別疾患は各種感染症・過敏性皮膚炎・腫瘍随伴性表皮剥離性皮膚炎・皮脂腺炎・副腎皮質機能亢進症・全身性エリテマトーデス(SLE)・剥脱性皮膚エリテマトーデス(ECLE)・多形紅斑(EM)・リンパ腫等が有りますが、今回の「胸腺腫非関連性剥脱性皮膚炎」は臨床症状・各種検査結果・投薬への反応・病理結果からは自己免疫性疾患の一つである多形紅斑(EM)もしくはスティーブンジョンソン症候群(SJS)が一番疑わしいと考えました。
この様に僕らは細かく色々と考えるのですが、まぁ実際は自己免疫性疾患だと分かれば、その中での細かい分類は治療には余り関係無く結局ステロイド等の大量投与など免疫抑制療法が中心になります。ただ、病気によっては非常に治療の反応が悪い事が有りますので、予後・投薬方法や期間を知る上では検査は重要になります。
更に自己免疫性なら原因が何か有るのか?が問題です。この子の場合は外出して帰ってからの風邪っぽい感染症状がきっかけでEMが出た感じでしたが(人のEMの原因ではヘルペスは非常に多いのですが、猫ではヘルペスウイルスの関与は現在の所は疑う報告は有っても証明されていません)、甲状腺機能亢進症に投薬しているお薬への副作用による薬疹からのEMも考えられます(今までの経験上はこの場合は非常に痒がるし口腔内病変は少ないのですが世界的な皮膚科専門医のデボア先生に聞くと疑わしいそうです)。
原因が有りハッキリしている場合は原因が治ったり取り除かれたりすると幸いにも治癒する事も多いのですが、この子も割と短期間の投与で治ってくれました。きっとどちらかが引き金になったのでしょう。でも原因が不明なので今後の再発には注意が必要です!