(アレルギーの症例:24)全力で色々としても2か月間難治で来院した足皮膚炎+α(色々)

ワンちゃん ウェスティ 初診時:11歳 11か月

病 歴:
昔前十字靭帯の損傷が有って手術をしたそうです。全身で膿皮があり、脂っぽいとの事ですが、特に指間が酷い様子です。ウェスティと言えば皮膚のトラブルが多い犬種さんではありますが、この子はずっと皮膚のトラブルも無く大丈夫だったそうです。つまり10歳を超えての発症となります。そうするとアトピーは考え難く、食事アレルギーの高齢発症のパターンは有り得るかな・・・と推察されます。ただし、本当は軽度のアトピー様の症状があったけど急激に悪化したパターンもあるでしょう。 もちろん高齢になって内臓・内分泌のトラブルや皮膚の腫瘍が発生した可能性もあります。要するに全方位的に鑑別を考える必要がありそうです。

もうすでに有名な病院で2か月治療されていたので「アポキル」「アンチノール」「抗炎症剤(これは膝の痛み止めを兼ねて)」「昔は抗菌➡今は抗脂漏シャンプー」「ステロイド外用剤」等々色々と治療はされています。でも治らず、アポキルで痒みは減るものの、飲まないと10段階で8と言うかなりの痒みにも悩まされています。 もちろん各種予防も最新のもので万全にされています。

初診時:
皮膚症状は「耳」から「尾」まで全身に及んでいます。紅斑・鱗屑(フケ)・膿皮があり、特に右耳は閉塞性の外耳炎です。


股の部分には膿皮やそれから続発する表皮小環が多数見られました。


尾も良く見ると赤く、分厚い鱗屑に覆われて一部脱毛しています。


肛門周囲も紅斑で赤くなって痒そうです。

ただし酷いのは全ての肢の先の炎症です。外側からでも分かるのですが・・・。

指の間が赤いですね。


右後肢ですが裏側の指間は真っ赤に腫れあがり、感染を疑わせる分泌物があります。


特に左の後肢は重度に肥厚し、痛々しいです。

前回に引き続き足皮膚炎をメインにPSPP分類をします。PSPPとは頭文字なのですが、日本語だと「主因」「素因」「持続因」「副因」になります。 それぞれ簡単に言えば「主因(それだけで発症する要因)」「素因(発症し易くさせる要因)」「持続因(難治性になる要因)」「副因(悪化する要因)」になります。これらは病気によって変わりますし、同じ要因でも複数の分類に入る場合も有ります。

今回の場合は病歴であまり決定打が無いです。
全身的な症状もあるので「アトピー・食事アレルギー」は主因として考慮が必要です。ただ、手が特に酷いので「腫瘍」も忘れないで診察が必要です。 昔の手術からの影響(負重の仕方や痛み)、肥満、ウェスティに多い本態性脂漏症等は素因として考慮が必要です。もちろん内分泌疾患も鑑別します。 特に左後肢の様に表皮が肥厚し結合織が増生し構造的に狭い指間の隙間になってしまった部分は持続因として対応が必要です。恐らくは脂腺や汗腺も変化しているでしょう・・・。 感染症としての副因は確実にありそうですが、細菌と決めつけないで真菌や寄生虫の検査と試験的な駆除をしっかりとします。
これらの主因・素因・持続因・副因に基づいて、色んな治療をして頂いていたのに治らなかった理由を考えます。

①アトピーへの投薬はされていましたが、投薬量が足りない(早く減らし過ぎ)と思いました。ただし足皮膚炎の状況からは感染時に多めの投薬をするのは確かに躊躇します。そういう時には短期間だけしっかりアポキルをしつつも、早期に他の方法で主因のコントロールをして上手にバトンタッチしなくてはなりません。 また食事に関しても丁寧に問診して成功しそうな可能性のある除去食のアドバイスをしました。これは必要かどうか?は正直分かりませんが、問診からは実行して損は無いと思われるので並行して頑張ります。

②外用だけでも細菌性疾患のコントロールは可能な事も多く、当院でも最近は耐性菌出現の問題もあり内服での抗菌療法をしない事もありますが、今回は部位的にも程度的にも必要と思われ積極的にしました。足は酷すぎて一度はせつ腫(深部の感染や異物反応から腫れて穴が開いて排膿したりする)も起こったので、速やかに適切な機関で細菌培養をして薬を決定します。もちろん外用療法にも色々と改善を加えます。

③痒みの程度が10ランクの8の評価でかなり高いのですが、痒みの一部は耳から問題が発生してそうなので足皮膚炎が一番問題ですが耳も積極的に治療します。この場合の薬のセレクトにも大切なポイントがあります。

④ハードな散歩が大好きだそうで、汚れが目立ったので散歩スタイルの変更とお手入れの指導をしました。適切な毛刈りは大切です。足の痛みとせつ腫の炎症をコントロールする為に元々出ている痛み止めは最低限で上手に続けます。

⑤寄生虫の予防は充分していると思われましたが、敢えて別の薬で投薬です。これは効果やコンプライアンス(投与の確実性)の向上の為でもあります。

さて①~⑤を可能な限りして頂き、初診から20日が経ちました。この位で急性期は抜けたいです。

右後肢です。炎症や腫れはかなり引きました。本人もかなり気にしません。この点は分泌物があるか?と共に改善の確認に大事なポイントです。


左後肢です。まだまだ炎症で赤いですが、腫れはかなり引きましたね。指間の隙間が確保できるか?は治癒に大事なポイントです。

急性期は無事に乗り越え・・・初診から40日後です。


1か月ちょっとで左右共にかなり改善しました!もう薬はかなり減らしていけます。全く痒みは無いそうです。後は投薬やお手入れをどれだけ減らせるか?ですね。

減薬して手間を減らして更に1か月経過後も維持されています。もちろん他の部分も改善してくれていますので写真を載せます。

右のソケイ(股)部分です。色素沈着は治癒過程で仕方ありません。

尾です。ここはまだ厚めのフケがありますね、油断できません。

肛門周囲です。発毛してくれると皮膚が一つ安定しますが、患部が見えなくなったり時には汚れやすくなるので注意が必要です。
とは言え、恐らくは今後も継続したケアが必要になるでしょう。

その後更に2か月しても安定していますが、ちょっと手先の汚れが気になっていました。お伝えすると次はキレイに毛刈りもしてくれて来院してくれました。こういうのは大切です!


例によって治った後も色素沈着は続いたりしますが、逆に変な病気(リンパ腫とか)だと白くなったりもします。色素沈着は仕方ないですが、もう感染(副因)や耳や手足の持続因(変形)はありません!・・・が、本人の体質(主因)は変わりませんので、治ってからも可能な限りのコントロールをする事が大切です。 色々とアドバイスをしていると大変だな~と思う事もありますが「治った状態を維持する」為に継続した努力をして下さるご家族の方に頼るしか有りませんので、感謝です。治ってからも定期的に診させて頂けると良いのですが、その辺はまた一つのハードルですね。