(アレルギーの症例:23)2か月治らない「せつ腫」

ワンちゃん フレンチブルドッグ 初診時:3歳 4か月

病 歴:
1歳の夏から指間炎が発生し、近医にてレーザーや局所のステロイド塗布でケアし、去年は順調でしたが今年は再発しました。 そして今年は治らず2か月が経過したそうです。その間で塗り薬をステロイドの効力ランクが強いものに変更しましたが、効果は乏しかったみたいです。

初診時:
当院ではまず問診を大切にします。もちろん病気の事も聞きますが、今の治療方法への反応(良くも悪くも)、ご家族のしたい事やできる事の希望等もお聞きします。 例えばこの子だと一般的に使用する「アレリーフ」と言う指間炎の薬が合わない様子です。また今回は使用していませんが、これも一般的に使用する「セアファレキシン」の抗菌薬が合わないご様子です。この様な情報は大切なので、来院前にはかかりつけの先生とも相談してまとめておいて下さいね。


全体的に指間炎は有りますが、特に両足の指の間が悪いです。まだ右足はこんな感じですが・・・。


左足は大きく腫れて中から排膿しています。この部位からは球菌と共に急性期で多い好中球と言う白血球と共にアレルギーや寄生虫で認める好酸球や慢性的な炎症で認められるマクロファージが多数認められました。こうなってしまうと特にフレンチブルさんだと手強くなります。

この様な状態を「せつ腫」と言います。ヒトだと所謂「おでき」ですね。毛包炎が進行して長期反復するものを言います。

犬では毛穴の破壊される様々な原因で引き起こされます。代表的には「細菌・皮膚糸状菌・ニキビダニ・外傷」と言われますが「多因性」である事がよくあります。 最近は外耳炎でもそうですがPSPP分類と言うのが、色々な要因の整理や治療方法や予防方法の決定や予後の判定に用いられます。

PSPPとは頭文字なのですが、日本語だと「主因」「素因」「持続因子」「副因」になります。
それぞれ簡単に言えば「主因(それだけで発症する要因)」「素因(なり易くさせる要因)」「持続因子(難治性になる要因)」「副因(悪化する要因)」になります。これらは病気によって変わりますし、同じ要因でも複数の分類に入る場合も有ります。

例えば「せつ腫」だと
主因ではアトピーや接触アレルギー、外傷、関節症、物理的刺激、異物など
素因だと犬種(フレンチブルドッグも)、体重増加、内分泌疾患、加齢、日光誘発、腫瘍、血行障害など
持続因子だと体重負荷具合の変化(関節症・先天性の骨格異常・体重増加も同じ)、構造的に狭い指間の隙間など
副因だと各種感染症など
ではこの子の場合は?と考えますと・・・

この子は問診からは主因にアトピーの存在を疑いますがアレリーフそのものの刺激もあったかも知れません。素因としてなり易いフレンチブルドッグの要因もありますから「なり易く再発もし易いだろうな・・・」と予測されます。現在悪化しているのは副因としての球菌の感染の存在でしょう。それぞれに対して配慮して系統立てて治療する事になるのですが、そうすると前の病院で足りなかったポイントがよく分かります。

感染している時の炎症のコントロールは難しい場合がありますし、この子の場合も同様です。最初からアトピーへのステロイドやアポキルを全力でするとかは当然良くありません。順番に使うなら有効な事ですので使わないわけではありませんが・・・。

お手入れ方法を変えて、敢えてステロイドのランクを1ランク下げて抗菌作用のあるステロイド外用に変え、抗菌薬をしっかりと飲ませて(選択には培養を必要とする事もありますが、せつ腫に相性の良い薬を知っていれば培養は後回しにするのも一つです。今回はしていません。)、ステロイドを使わないで確実に抗炎を施す事も大切です。お手入れの泡フォームと外用ステロイドと内服4種が最初のスタートです。

1週で凄くよくなりましたが・・・吐いて食欲が減ってしまいました・・・。もちろん予防策は講じていましたが個人差が有りますので仕方ありません。相談して薬を調整します。


2週で右足の指間はほぼ大丈夫になりました!でも2日前にドッグランに行ったら腫れたそうです。物理的刺激は「主因」になる要因です!ドッグランは楽しいですが、今は止めて頂き今後も要注意だとお話します。この様なアドバイスも今後の為にも大切になってきます。

同時に左足も落ち着いたので、やっとアレルギーの治療薬アポキルの出番です!もうそんなに足を気にしなくなったのですが、主因とみなしているので積極的に治療をします。 抗菌薬は吐くので注射タイプに変更し(これも最初の薬の役割が終わったので交代)、外用ステロイドの頻度もグンと下げました。更に2週間が経ちました。


右足はスッカリ良いですね!


かなり排膿して腫れていた左足もほぼ色素沈着だけです。一旦治療は終了で良いでしょう。もちろん主因であるアトピーや物理的な刺激へのケアや注意は今後も必要だと思われます。 ちなみにせつ腫は酷い場合は外科処置が必要になる場合もあります。

非常に性格が良い優しい子でご家族も熱心なので助かりました。今後も注意は必要ですが、今後も主因とお付き合いできるでしょう。お気づきの方もおられるかもですが、最近は皮膚科の診察室を少し手先・足先中心にしてみました!