(その他の症例:21)これも単に知っているか?が全てです

■猫ちゃん:
初診時3歳3か月 雌
なぜ長く避妊をされて無かったのか?は病歴で分かります。
■病歴:
FIP:猫伝染性腹膜炎(昔は不治の病でした。話題の中国初の特効薬で完治、今は色々と安めの薬もあります)
そうです。このFIPで大変だったので、治癒後もストレスを掛ける避妊手術を避けてこられたのです。
■初診時:
お腹にしこりがあるとの事で来院されました。
猫は乳腺腫瘍になると9割近くが悪性です。避妊もしていないし、可能性は排除してはダメですが、基本的には若すぎます。
ちなみに妊娠の可能性はありません(オスも居ないし、脱走もしていない)。猫では犬の様な偽妊娠もありません。
そもそも乳腺以外の腫瘍も色々と有りますし、まずは診てみないとダメですね。分かり易く毛刈りをしてから・・・

ご家族の発見した部分の一番下が目立つのですが(後述する病気の特徴としてそうです)、実は乳腺は全体に妊娠している様に張っています。こういうのも毛刈りをする事で更によく確認できます(もちろんしたくない場合はしなくても大丈夫です)。
ちょっと分かり辛いので一番下を持ってみます。

パンパンです。ミルクは・・・出ないですね。熱感も疼痛もありません。
実はこの時点でもう病名は殆ど決まったも同然ですが、念の為に「乳腺と他の腫瘍の可能性」「乳腺炎の可能性」の排除の為に針を刺して細胞診断をしてみます。全く何も無いです。ちなみに「これはこの病気だな」と確信的に思っても、基本的にはきちんと除外診断をするのが大切だと思っていますが、費用負担に応じて検査の有効性を相談して決めますので、御相談下さいね。
これは「乳腺線維腺腫様過形成」ですね。
知らないと抗菌薬や腫れ止めとか効かないホルモン剤とかを飲まされるかも知れません。
猫特有の急性に起きる乳腺の硬結で基本的には若い子に起こります。
猫特有の病気で犬には起こりません(犬には偽妊娠ってのはあります)。実は成熟する前の子猫にも起こりますし、なんなら不妊手術の直後にも起こります(以前に経験したのはこっちでした)。
全くミルクが出ないのは本病の乳腺の腫れがプロジェステロン(黄体ホルモン)の分泌から起こるからで、これは通常のプロラクチン(乳腺刺激ホルモン)とは違うからです。
ややこしいのはこれって妊娠した猫にも起こるんです。だからこの病気になった母猫の子供さんが一生懸命にお母さんのパンパンのオッパイを吸っていても「ただ単に腫れている乳腺」を吸っているだけなので気が付かないと子供は餓死します・・・(子供が生まれたら毎日体重測定が大切!と言う事です)。
基本的には乳腺炎と違って痛くないのですが、どんどん腫れるので違和感や擦れで猫さんが舐めて潰れて感染して乳腺炎になると言う訳の分からない状態になる事もあります。僕が前回診た子はホルスタイン牛みたいになっていました・・・。
早速治療をしなければいけません。でもホルモンの状況で避妊手術「直後」になったりするので、即避妊をしても解決するか?と言うと違います。では、どうするのでしょうか?
実は乳腺線維腺腫様過形成には特効薬のプロジェステロン拮抗薬があり、著効します。1週毎に注射して、と・・・。
3週でスッカリ治りました。

毛も生えてきて、なんか分かり難いですよね・・・(^^;)

最終的に元FIPですが再発も怖いとの事で適切なタイミングで避妊手術をしました。
こっちの写真の方が分かり易いですね。
FIPを完治させた熱意あるご家族なので日々状態を観察し素早く腫れを察知してくれたホルスタイン級になる前で良かったです!