(アレルギーの症例:15)最近多いアレルギーは土台でしかないだろう難治性の子 ワンちゃん・アメリカンコッカースパニエル・避妊メス・初診時10歳6か月

病 歴:
小さい時から身体が弱い子だったそうです。
最近では網膜変性症からの緑内障、小眼球症などもあったそうです。皮膚に関しては2歳から悪く、ずっと悩んでおられます。
ご家族の方はトリマーの方なので、洗ったり皮膚の様子を見たりするのはプロフェッショナルです。獣医さんによっては「他の専門家の方は苦手だな~」と言う方もおられるのですが、後述します様に僕 はどっちかと言うと、その様な医療やペット関係の他の専門家の人の方が嬉しいですね。


初診時:
痒みの程度を表すVASスコアは10の内で7(最初は10かも?と)と相当痒いです。2歳から色々な治療をしていますが、ずっと悪いそうです。標準治療はされていてある程度の効果はあるご様子ですが、特に痒みが引かないみたいです。

前の先生・・・が、またちゃんとした皮膚の先生ですね・・・これは若干プレッシャーです(苦笑)。基本的には皮膚科診察にミラクルな事は有りません。今の時代、もし有れば全員がしています。これは何科であっても同じ事だと思います。ですので良い先生が先に診ている程に丁寧に見落とし や、最初は無かったその後の変化や、他にできる事が無いか、他の方法で可能な事が無いか?を探して、一緒に頑張る必要があるのです。そういう点は遣り甲斐でもあるんですけどね。

丁寧な問診の後には、皮膚科の診察でもきちんと聴診や触診が大切です。非常に大切にしています。色んな先生がおられるかも知れませんが、これを丁寧にしない方がいたら〇〇医者か超能力者です。

*心拍数は少なめです。甲状腺も調べようかな?

*リンパ節が少し腫れています。昔、近隣の病院の転院症例が地中海の病気「リーシュマニア」でした(感染の症例4)。色々な腫瘍だった事もあります。単に皮膚が悪いせいか?要注意です。

*痩せています。背後に何か疾患があるかも知れませんし、食事が原因かも知れません。

やっと皮膚の診察になります。いつも同じですが、まず感染症を調べます。実はここはアレルギー以前の話になっている事が多いです。逆にここに執着して、土台のアレルギーや掻痒行為そのものが治療されず放置されている事も多いです。






治療経過:
皮膚に表れている変化を皮疹と言いますが、赤く炎症を起こし皮下で闘い、身体から病原体を排除しようと言う様子が痒みの場所(特に尾)と一致して確認できます。とりあえず、感染症です。何の?が次のチェックです。 実は検査の仕方には色々とコツがありますが、一般的な獣医さんではちゃんと完了していない事が多いです。

でも逆に僕らでもちゃんとしようと思ったら、とんでもなくペットさんやご家族に身体的・費用的に負担になる事も多いです。ですので「あえてちゃんとしないで、試験的に治療する」事もあります。 この辺のさじ加減と相談は教科書的ではなく、長く皮膚科認定医をしている力量が問われるポイントだと思っています。


感染症の治療には内服だけでなく外用も必要ですが、シーズン柄でお仕事が忙しく逆にこの子には十分な時間を取ってあげられないそうです。心中お察し申し上げます・・・こういう時に理想論で責める先生もおられますが、 僕はあまり無理強いは好きではありません。洗えないなら洗えないなりにできる事を相談して提案します。

洗えませんでしたが1週でかなり痒みが減りました!その時点で甲状腺の詳しい検査をご提案しました(これは低めでしたが、治療レベルではありませんでした)。まずは「一番大きな問題」を「その時できる方法」で解決すると、余裕が出てきます。1か月するとかなり改善して、お仕事も落ち着いて洗える様にもなってきました。

どんどん良くなりますが、途中で珍しいサプリを飲んだ後に悪化したり、紆余曲折はあります。 この子に関しては感染症とアトピーの治療をしながらして頂きたい事が2つありました。 *食事のコントロールをする事(少なくとも何を食べているか把握し、制限する事) *体全体や皮膚の免疫力を上げる(恐らくは身体・皮膚自体が弱い子の感じがした為)

ご家族の方は熱心かつプロですので、状態を詳しく看て教えて下さいますし、可能な事は全部ちゃんとして下さいます。そして、自分が顧客の方に話す相談までを含めて、よく質問して頂けます。 もちろん診てない子は一般的な話しかできないのですが、そういう事を通じて間接的に他の子のお役にも立てるかな?と言うのが、上記の「僕が医療やペット関係の他の専門家の人の方が嬉しい」と思う点です。

3か月で苔癬化(タコみたいに分厚く慢性変化してしまった皮膚)・色素沈着・イボ以外は殆ど正常になってくれました!特に長年の悩みの尾っぽに関しては相当良くなってくれました。体重も1kg増量できました!




尾が一番の改善ポイントです。尾はどうしても気になって自傷してしまいがちですので、時に治すのが難しい場所です。

今後もこの子は根本的には治る事は無いかも知れません。お歳ですし他の病気にも気をつけないとダメだとは思います。でも治らない事と良くならない事は全く違います!色々と小さい時から病気が有って大変だとは思いますが、だからこそ可能な限り尽くしてくれる良いご家族のお家で暮らせて幸せな子だと思います。


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