(アレルギーの症例:22)アトピー保護犬さんの復活! ワンちゃん 柴犬 避妊メス 初診時:11歳7か月

病 歴:
約3年前に知人から保護した子だそうです。その時点でムチャクチャな食生活等で大変だったそうです。そして皮膚も耳も最初から凄く状態が悪かったそうです。 保護して貰って大切にして貰って3年経つのに皮膚は相変わらず・・・。近所の動物病院でノミ?との事で治療はしたものの悪化の一途との事でご来院されました。

初診時:
これは残念ながら重度です。痒みは寝られない位ですし、可哀想です。もちろん保護して下さった親切なご家族によって近所の動物病院さんから指示されたシャンプーや耳掃除は頑張って下さっています。 ワンちゃん自身も非常に性格の良い子で協力的です。



左の顔です。

まさしくアトピーと言う感じで典型的です。
もちろん通常は腰に症状が出るノミでもこうなりますし、食物アレルギーが原因だったり色々と考えられます。


左の内股です。


右横から写した脇から股です。


正面から写した下腹部です。

重度の色素沈着と脱毛と肥厚による象皮、鱗屑(フケ)、それらの周囲の発赤・・・。


肛門周囲です。

まさしく頭の先からお尻まで全身性に重度の症状があります。ご家族は痒みもさる事ながら、「近所の方にこういうワンちゃんと思われていて可哀想だ」とお気持ちを伝えて下さいました。この子が散歩したらご近所の方がビックリする様にしてあげたいものです!

以前に同じ位の子で治した事がありますが、この子はその子に匹敵するレベルで重度の皮膚症状です。
https://kyoto-yuu.jp/allergy_disease_5.html

この子もそれなりに治療はされていたので、過去の色々な情報を集めて「何が足りないか(方法や量)?」「何が良く無さそうか(治療の相性)?」等を一つ一つ紐解いていかなければならないです。

相当に酷いので、スタート時点でご家族に熱意が無いと無理なのですが、その辺は保護犬としてこの子を迎えてくれた位の愛情溢れるお家なので安心です!

症状が酷くても治療としての進め方は基本的に同じです。こういう重度の子だと何か「魔法の様な特別な食事」「高価で特別なスキンケア用品」が必要かと言うと、正直ほぼ要らないです。 ただ、慢性化してしまった状況ではすぐには結果が出ませんので、とにかく丁寧に根気強くケアをする「時間」と「愛情」が大切です(それでも通常は要する日数は2~3か月ですけどね)。

すぐに結果は出ない場合は、治療に関しては「反応を見る」事も絶対に必要です。この辺はしっかりとお話しますが、稀に初診で「悪化した!」と治療を全部止めて転院されてしまわれる事もあります。その流れにハマると延々と色んな動物病院でそれを繰り返しかねないので、何とかご説明等を丁寧にして一緒に頑張って頂ける様に・・・と努力しています。
でも僕が未熟で年に1~2回は初回で診察が終わる子がいるので、もっと頑張らないとダメだ!と思っております。そういう時は心底残念ですので。

最初から山盛りステロイドを打ったり飲んで貰ったら最初の反応が良い事は確かに多いんですけどね・・・。

この子も皮膚の基本的な検査で感染症を検査し、試験的な駆虫が可能な事は行い、特に高齢の柴犬ですので甲状腺ホルモンの検査をしてスタートです。 見た目的にはマラセチアと言うカビが悪さをしてそうでしたが、感染は無さそうです。ご家族がちゃんと洗っている成果でしょう。先入観は禁物ですね。甲状腺のホルモンの値はちょっと少ないので足せば早く反応するかも知れませんが、まずは投薬を「しません」でした。 何故?と言われると困るのですが、全体的な様子や脱毛の仕方などを考えると甲状腺ホルモンが主な原因とは思えなかったからです。

でも、こういう場合にはもう最初からステロイドを使用した方が良いです。食事やアポキルやサイトポイントでなく・・・経験ですが。でもステロイドを使うと言っても全然多くは使いません。

まずは単純に痒みを止めて、基本的なスキンケアと少量のステロイドの内服と外用を使用してスタートです。さて2週間後ですが・・・。

痒みはゼロになったそうですが、でも皮膚は当然まだまだです。でもお伝えした事がちゃんとできるご家族だとしっかり確認できました! 非常に上手に洗って、しっかりと投薬や塗り薬ができています。わずか2週でもこの子の皮膚からご家族からも、それを感じます。

この先をどうするか?実はこういう場合には有名な外用療法があります。

ただしそれをする場合は預かったり、手間が面倒だったり、かなり大変なのです。発表された方法が成果をきちんと確認している王道だとは思うのですが、する人間側もされるペット側も大変な治療ではあるので、ちょっと方法や使用薬を変えてみて家でも可能な状態で実行しています。 もちろんそれには普通の場合より「家族様の熱意と努力」が必要なので、今回はそれが可能だと思ってご紹介しております。 飲み薬は2週毎に半減して、ほぼほぼ飲まなくしました。でもこの子から完全に抜く事は当面難しいでしょう。 最初に調べた時にあった貧血のケアも兼ねてサプリメントも併用します。

さて更に1か月が経ちました。初診から1.5か月なのでボチボチ成果が出て欲しいです。



左サイドからです。かなり良くなっています!右サイドも当然同様です。



下腹部です。明らかに良いですね!でも一個膿皮ができました。この程度なら全身の抗菌薬は不要です。逆に今までは膿皮ができても気が付かなかったでしょうね。



肛門周辺も良い感じです。痒みは全くありません。発毛が嬉しいですね。

さて更に一か月が経ちました。最初にあった貧血も治り、甲状腺の値も正常化しました。 皮膚は実は最大の臓器だとも言われます。全身の皮膚疾患や重度に消耗する原因にもなりますし、炎症や脱毛や鱗屑は蛋白を消費する事にもなります。 皮膚が治った事で全身的にも改善しました!ステロイドはしていますが、4日に1日だけで一生飲んでも恐らくは大丈夫なペースです。



お顔です。かなり綺麗ですね!



左サイドからの様子です。



右サイドも良いですよ!



お腹は感動的ですらあります。



肛門も大丈夫で、全身的に昔の面影はありません!

さて更に2か月、春を超えましたが大丈夫でしょうか?



お顔です。全く普通ですね。と、言うかむしろ柴さんとして美人なお顔を見て欲しいのですが、一応目隠しを・・・。



左サイドからの様子です。良く見ると・・・と言う位です。



右サイドもほぼ正常です!



お腹は乾燥はありますが、柔肌と言って良い位で白くなってきました。



肛門も大丈夫です。でも尾の下は紅色丘疹がありますし、脱毛も少しあります。

95点と言って良いですが、ここで完全にお手入れと内服を止めるのは良くないと経験上判断して、4日に一度の抗炎症量のごく少量のステロイドと2週一回のシャンプー、そしてなるべくマメな保湿を頑張って、日々皮膚に良いサプリ(市販品です)を使っています。でも食事は何の制限もありません!ご近所の方も「同じ犬?」「綺麗になったね~!」と凄く褒めてくれるそうです。ご家族は「前は汚かったのかな(笑)」と冗談を言われていましたが、保護されて皮膚も殆ど正常になって更に幸せになったこの子と優しいご家族を見ると頑張って良かったなぁ~と満足です。

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