(免疫介在性・自己免疫疾患性の症例:1)スウィーツ病(犬の無菌性好中球性皮膚症)疑い ■ワンちゃん 初診時13歳6カ月 ♂
■初診時:右後肢、右手首の痛みで痛み止めを内服しました。3日後から元気食欲消失し、左手首も可動痛、左右頸部リンパ節腫大、体温40.7度で身体の炎症を示すCRPが上昇し、尿潜血を認めるなど全身症状が悪化、同時に口唇と右大腿部に発赤とびらんを認めました。

*全身の症状を伴う致死的な皮膚病と言うのがあります。全身症状には要注意です。

一般血液検査、T4 、FT4、TSH(甲状腺ホルモン系の検査)は著変無く、ANA(ある種の自己免疫性疾患への検査)陰性、リウマチ因子陰性、S-CPL(膵炎の検査)は全て正常値でした。抗生剤を投与するも改善無く、びらんは肛門にも広がりました。
進行が早く取り急ぎ全身のCT検査をしても著変無く、同時に行ったリンパ節の生検とPCR(遺伝子の検査)、関節液培養と細胞学的検査は全て著変ありませんでした。白血球が上昇し低蛋白になり、呼吸状態が急激に悪化、救急的にステロイドを投与開始しました。
その後一般状態が改善しましたが、皮膚症状は進行しました。
*重度の病気では原因究明に色々な病気の検査が必要になります。
 通常はこの様に酷い皮膚病と共に全身状態が悪くなるのは「全身性エリテマトーデス が多いのですが、通常ならANA検査は陽性になるはずです…原因は不明ですがステロイドを投与し始めています。原因が分からなくても亡くなる前に治療が優先されます

*左は肛門周囲で皮膚が落ちてしまっています。右は耳ですが多くの結節ができています。

耳の皮膚からの生検をしてANAと言う東京の皮膚専門医のご助言が頂ける施設で調べて貰いました。結果は「犬の無菌性好中球性皮膚症の疑い」でした。別名「スィーツ病」とも言われますが、正直初めて見聞きする病気でした。
感染も除外が必要ですので、ステロイドを使用しつつも、あらゆる抗生剤を使いました。更にエールリッヒア・レプトスピラ・ライム病等の珍しい感染症の抗体も調べました。 感染は完全に除外できませんが、ステロイドだけに反応し、全ての検査は陰性でした。
皮膚は治ってくれました。オーナー様の努力のお陰で長く頑張ってくれましたが、様々な免疫が絡んだと思われる症状を併発して残念ながら200日弱で亡くなってしまいました。 より詳しくこの病気について勉強して、皮膚科学会で発表しました。