(免疫介在性・自己免疫疾患性の症例:6)単なる膿皮症と間違えると困る落葉状天疱瘡 ■わんちゃん ミニチュアダックスフンド 初診年齢9歳5か月 ♂
■病歴:椎間板ヘルニアにて二度の手術をされている子です。やっとヘルニアが治った・・・と思っていたら3か月前から急に身体に膿皮(膿を伴う発疹)が多発して、かなり悪化してきたそうです。抗生物質を投与したり、抗ヒスタミンをしてみたり、カビの薬を飲んだり、最後はステロイドを少し飲んだり・・・スキンケアも色々としましたが、治りません。

可哀想ですが、全身に著しい痂疲(カサブタ)を伴った大きめの膿皮が多発していました。色々な所で脱毛し、残った毛もガサガサになっていました。足は厚いカサブタで覆われて肉球も見えません・・・。何より発熱してグッタリしていました。



膿の細胞診断をすると、通常の膿皮にある白血球(好中球)と共に独特の「棘融解細胞」が沢山出てきました。これはダメージを受けて周囲から剥がれてしまった表皮細胞です。酷い細菌感染やある種の糸状菌でも発生する為に断定はできませんが、多量に発生し独特の臨床症状が有る場合は「落葉状天疱瘡 と言う自己免疫性の疾患を強く疑います。


赤矢印が「棘融解細胞」

すぐに皮膚を採って調べる皮膚生検をしました。通常はすぐにはしない事が多い検査ですが、特異的な治療が必要そうな場合は重症度によってはかなり早くお勧めします。

病理組織により「落葉状天疱瘡」の診断を頂きました。
これは腹部に見えた先の黄色い膿疱を採ったものです。右端に見える表皮の有棘層の細胞(緑矢印)が好中球に囲まれて棘融解細胞として浮いています。これは基本的に細胞診と同じですが、全体像の確認に加えて、真菌感染など他の病気が無いかの鑑別に役立ちます。



落葉状天疱瘡は表皮の角化細胞間の接着構造であるデスモゾームに対して攻撃をする自己抗体ができる事によって、角質下に膿疱やびらんができてしまう自己免疫性の病気です。

治療にはアレルギー治療でも使われるステロイドが主に成りますが、かなりの高用量を長期に使う事になります。
副作用が発生する事もある高用量ですので、病気を正しく診断してから開始する必要が有ります。また、診断が確かなら最初からステロイド以外の高価な免疫療法の薬も使用を検討できます。



治療の成果により体幹は著しく治ってくれました!・・・が、肉球の部分の改善はなかなか進みません。こちらには度々感染も発生する為に、維持治療には時間が掛かりそうです。


かなり良くなってくれました!薬も減量が進んでいます!後は地道なスキンケアが大切です。

病気には基本的に一生付き合わないといけませんので、大変なのですが熱心な飼い主様ですのできっと肉球も徐々に綺麗になるでしょう(一部の痂疲については完治を目指さない方が、副作用等を考えると現実的な事もあります)。ただ、皮膚の治療中に持病のヘルニアが再発して地元の病院で再々再手術になってしまったので、色々と大変です・・・。

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