(免疫介在性・自己免疫疾患性の症例:9)難病治療をオンライン診療で一緒に頑張りました! 先にお伝えしますが、基本的にはオンライン診療で初診で「診断と治療」はできません。当院では最初は可能なら来院して頂いたり、通常は継続診察としてオンライン診療を活用しています。今回はオンラインを通じてご家族と現地の獣医師さんとで協力して治療をした記録です。

■ネコちゃん 初診年齢7歳 

■病歴:

それまでは元気にしていたが、急に11月下旬に頭部に痂疲ができた。11月末には2週有効の抗生物質の注射と長期間作用性のステロイドの注射を地元(四国!)の獣医さんに注射して頂いたそうですが、悪化の一途・・・多量のステロイドを5日内服したけど治らなかったので、今度は別の免疫抑制剤のシクロスポリンをしたのですが、更に悪化・・・皮膚が酷すぎてか副作用かグッタリしてきて死にそうだ、とクリスマスにお電話がありました。予約はギッチリで当時飛込のオンライン診療は対応していませんでしたが、何とか通常診察後に対応しました。受付のスタッフが「泣いておられて大変そうなんです!」と熱意を持って僕につないでくれたお陰です。

■症状:

お電話でお聞きしても「大変そうだな・・・」と思いましたが、実際は想像を超えていました。

たまにお電話やメールで「大丈夫でしょうか?」と聞かれますが、基本的に診てない事は分かりません。

残念ながらオンライン診療は来院しての診察に匹敵するものでは決してありませんが、事前に画像やデータを送って頂けますし、リアルタイムで話をしながら色んな情報を頂けるのでかなり事情を掴める可能性が増します。今回はそれを感じました。 この後の症状の画像はかなりショッキングなので、苦手な方はご覧にならないで下さいね。自分の愛猫にここまでの症状が出て死にかけていたら・・・それは泣きます。

オンライン診療でのアドバイスでどれだけお役にたてるかは分かりませんが、一生懸命に検索して頼って頂けたので頑張りたいものです。





かなり下の方に画像を載せます。






















これは内股です。もう見えている所の皮は全部落ちてしまっています・・・。毛が付いている所の下の皮膚もまともでは無いでしょう。


頭には大きなカサブタ(痂疲)があります。オンラインで見ると牡蠣殻みたいに凄いボリュームです。


とりあえず思った事は「ここまでの症状を急に引き起こすならば、恐らく重度の自己免疫性疾患だろう」と言う事です。

恐らく地元の獣医さんもそれを想定してステロイド等を開始してみたのですが、全く治らずに悪化の一途なので「どうして良いか分からない」になったのだと思います。この地元の獣医さんの素晴らしい所は「もう分からない」と言う事を素直にご家族にお伝えになられたと言う事です。世の中には未だに「う~ん、これは当院で無理っぽいけど、転院されちゃうし何とか頑張ろう」「とりあえず経験になるし頑張ろう!」って良く言えばポジティブで悪く言うと無責任な姿勢な方もおられますが、 僕は「自分の能力を高めながらも自分の能力を超える事は対応しない」スタンスが誠実だと思っています。今までで一番逆の意味で凄いな~と思った先生は当院にセカンドピニオンを聞きに来ただけで「信頼関係を損ねる事をするな!」と激怒してご家族を泣かせていましたが・・・そういうのは獣医以前に人として「どうかなぁ」と思います。オラオラ獣医で確かに頼もしい面も有るのかも知れませんが・・・。

まずは今現在している検査としていない検査を一個ずつ確認させて頂きました。 困った・・・全然していない・・・(苦笑)。あんまり検査をしない方向性の獣医さんで、それは費用が掛からない優しい獣医療だとも言えますが、その代わりに「二次感染をしていないか?の患部の各種培養検査」「多量のステロイド等の投薬に耐えれるか?の本人の身体の検査(特に肝臓)」そして何より「何の病気なのか?を推察する皮膚そのものの生検」の情報が全く無いです・・・。

それらが無かったら僕でも指針が無いので五里霧中になります。ただもう患者さんは死にそうになっているので一から調べる猶予はありません。

「現状は重度の自己免疫性疾患だと思われます。恐らくは感染を併発しています。悪化する可能性もありますが、地元の獣医さんと一緒に次の様に治療して頂いて貰って下さい。」とお伝えして【思い切った使用量の免疫抑制を感染のケアをしつつ行う】事を選択して頂きました。治らなかったのは副作用を恐れて必要な量の投薬ができてないのが根本原因で、感染症は併発しているだけと判断しました。間違っていたら大変ですが・・・。

更に悪化したらご自宅近辺だとこういう病院が大きいですよ、神戸まで行けばこんな皮膚の有名な先生がおられますよ、とお伝えしつつ後は祈るばかりです。

思い切っての投薬を3日したら元気が出てくれたそうですが・・・心配なお正月です。ご家族は尚更でしょう。

年が明けて約2週後・・・シクロスポリンは猫の22%で副作用を起こしますので、それも心配です。 まだまだ大変ですが明らかに治ってきています!(写真は下の二つの上の方です)

ただ、皮膚が良くなる過程で安心したら副作用で全身が悪くなる事もあるので、慎重に検査をして頂きました。この辺はどうしても辛い思い出もあります・・・。オンラインですので更に様子を掴むのは難しいので、慎重に頑張って頂きました。副作用が怖いからと、少し良くなったからと言って手を緩めると重度の自己免疫性疾患だと一気に悪くなります。この辺はまだまだ綱渡りです。幸いにもご家族は凄く熱心で、暮らしている環境も綺麗で安心です。その辺もオンラインだとメールなどより良く分かり安心です。地元の獣医さんも横から意見を言う形になる僕の意見を尊重して頂いて下さる素晴らしい方で助かります。

更に20日程・・・良いです!これは方向性としては明らかに間違って無かったです(写真は下の二つの下の方です)。

嬉しい事ですが、ここからが第二関門です。最初に免疫抑制の為に飲んでいる凄く高用量のステロイドとシクロスポリンから上手に離脱しなくてはいけません。



もちろん頭部の大きな痂疲(カサブタ)も取れて良くなっています!連日で一か月シクロスポリンをすると100g痩せると言われますが、それ以上に痩せないか?なども注意します(でも自宅だとなかなか正確に測れない事も・・・)。



早いもので最初から3か月、この間メールでもやり取りをしつつ、月一回位のオンライン診療で慎重に減薬をしてきました。何の皮膚病か?が分かっていれば教科書的な減薬方法や予後の判定も可能ですが、何も分からないので慎重にせざるを得ません。 また一旦ステロイドで医原性クッシングにしてしまうと猫では中止しても元に戻るまで5か月かかると言われます。猫は特にステロイドで心不全で死亡も多いですし、副作用はとにかく要注意です。





もう相当良いです!



更に一か月後、お薬もかなり減らしていますが、順調そのものです。 この直後の診察で小さなカサブタ(痂疲)も完全に取れた様子をオンラインでも確認しました。ここまできたら後は更に慎重に減薬して無事に終われると思います。ただし、最終的に薬を完全に止めてしまうか?は再発のリスクと天秤にかけて考えなくてはいけません。猫ではシクロスポリンは70%で週2回に減薬可能で、そこまで来れば副作用の発生率は約7割から3割弱になりますが、それでも中止できるなら投薬は中止したいものです。その辺も一緒にじっくり相談しました。

今回は何よりも愛情深く熱心なご家族と、協力して下さる地元の獣医さんのお力で治せました。実はブリーダーさんなのですが、僕はブリーダーさんって品種への凄い愛情とか情熱やプライドか無いとできないと思いますが、哀しいかなニュースでは時折繁殖させる道具の様に扱うブリーダーさんの報道があります。京都でも今年ニュースがありました・・・。

当たり前でしょ!ってご家族に言われるかも知れませんが、今回はそんな劣悪な状況とは真反対で本当に綺麗な環境で暮らしている事と難病になっても見捨てずに全力で治す姿勢に感動しました。幸せな環境から全国のご家庭に猫さんが旅立つのは本当に良いですね。僕もオンライン診療でも全国の方のお役にたてると嬉しいので更に研鑽を積みたいと思っております。

受付

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