(感染症の症例:13)難治性でも、いつも検査が大変じゃないですよ! ワンちゃん シェットランドシープドッグ 初診時4歳8か月

■病歴:
1歳前から膿皮症が多い事に悩まれています。ただ今回は色々な治療をして頂いても治らず困られています・・・。とても良い病院に行かれているので、治療としても特に問題は有りません。 これはもう変わった病気なのでしょうか?他の症例でも沢山出てきますが、即日「皮膚生検」のパターンでしょうか?

■初診時: 皮膚科をしていれば難治性の皮膚疾患のシェルティーと言うだけで、バイアス(先入観)が入るかも知れませんが、まず漏れなく問診をします。
バイアスを減少させる為にも当院では普通の問診に加えて、基本となる皮膚の問診表に記入して頂きます。ご家族の方が気になる事(痒いとかフケが多いとか)が気になったり、今一番酷い症状がどうしても気になるのですが、一旦それを脇に置いておいて、時間軸的にも今から遡ります。

更にはその子を離れて、同居のヒトやペットさん(犬猫に限らず)の事も考えます。

果ては日本と言う国も一旦忘れないとダメです。近所の病院さんの転院で「酷い皮膚病だなぁ~・・・」と思ったら、何とその子はイタリアで修行していたシェフが地中海で拾ったワンちゃんで、日本では殆ど存在しないリーシュマニア症だった事も有ります。
https://kyoto-yuu.jp/infectious_disease_4.html
最初の病院ではそれを知らずに寄生虫だらけの滲出物(血膿)をご家族と看護士さんが触れていたので、怖かったですが、そういう事もあります。
認定医として勉強した事に加えて、色んな経験を経て「確率の高い事」は分かりますし、第六感みたいな何かを感じる事も増えましたが、病歴・問診・視診は非常に大切にしています。


フケが沢山あります。どんな形・大きさのフケなのか?なぜフケが出ているのか?探ります。





拡大図です。

フケは膿皮症から発生してそうです。ニキビみたいなもんだから、膿が有って菌がいて、犬だからブドウ球菌で・・・。
と、安易に考えてしまうとスタートを間違えてしまうかも知れません。



顕微鏡写真です。当病院の症例集で良く出てきますね、白血球の一種の好中球が球菌を貪食しています。
じゃあ細菌の感染で難治性なら耐性菌で~となりそうですが


他の部分を改めて見て、変な自己免疫性疾患を鑑別します。もちろん見ただけでは無理ですが、見て怪しむ事はできます。

犬種(シェルティー)からは皮膚筋炎・薬物有害反応・エリテマトーデス(特に水泡性)・多型紅斑など境界部皮膚炎を起こす疾患や、甲状腺機能低下症・・・
そして犬種特異的な表在性拡大性膿皮症(表皮小環)の発生率の高さ、等々が鑑別が必要な疾患として考えられます。

境界部皮膚炎を起こす疾患の診断には最終的には皮膚生検が必要ですが、現在は「頭部特に耳介内側や鼻梁が問題無い・肉球に問題無い・棘融解細胞が無い・粘膜部に問題が無い」ですし、明瞭な球菌の貪食を伴う感染像が表皮小環の痂疲下に有るので「感染症の治療をして治らなければ生検をさせて頂く」話だけしております。

そう、必ずしもすぐに生検はしませんので御安心下さい。
逆にすぐに薦められた時はかなり切迫していたり、どうしても情報が必要な場合だとご理解下さい。

さて耐性菌かどうか・・・恐らくこれは病歴から間違い無さそうです。
それはご紹介頂いた病院が凄くちゃんと治療をされているからです。時には直前にしていた治療がトリッキー過ぎて困る事も有りますが、ちゃんと治療して頂いていると「あぁ、もうこれは効かないんだな・・・」とハッキリ分かります。


耐性菌を疑えば、ちゃんとした検査機関(☜これ大事です!)で培養する。のですが、今回はそれもしませんでした。 何故か!?・・・年末だったからです。
年末年始は検査機関も休みで培養してくれません(涙)!

じゃあ年始に治すから、我慢してまた来年来て下さいね、良いお年を!とはなりません。
ワンちゃんは毎日痒いですし、皮膚は可哀想な状態で、ご家族は日々悩んでおられます!

逆にこういう検査ができない時こそ(時期でも費用でも何でも)、認定医としての力量が問われると思っています。
ですので、文献的に耐性菌に効く可能性が高い薬からチョイスします。さらに外用療法は改善の余地が有ったので丁寧にご指導します。今回は犬種も考えてある薬も・・・。
もし効かなければ年明けに精査しましょう!とだけお伝えしておきました。


さて年始、治ったのでしょうか・・・?




両方下腹部です。去年末は酷い状態で、今年初めには無事にキレイになってくれました!
・・・と、言う事でこの子は色々と考えていますが、結局何も特別な検査をしなかったです(後日、念の為に甲状腺を調べて問題ありませんでした)。

この子には犬種特異的な膿皮症の発生は今後もあるかも知れません。

ただ、今回に関しては長い経過が有りましたが、それこそ特別な検査をしないで年末年始だけで治ってくれました。

治療内容に関しては結果的に普通かも知れませんが、一歩間違うと重大な病気を見逃す可能性が有るので僕の脳内では凄く沢山考えた子です。 いつも思いますが、直前の病院がしっかりされている程に考えるべき事が定まり、やるべき事がシンプルになって助かります。今回も助かりました。 後は元の病院で日々の予防と再発時のケアををしっかりして頂けたら大丈夫だと思います。

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