(その他の症例:11)若年性蜂窩織炎は急に発生して本当にビックリします。この子は年齢もビックリ! ■犬 ポメラニアン 初診時1歳3か月 去勢♂
■病歴:今まで特に無し。5~6日前に左目まぶたが腫れて、他院で眼軟膏を貰った。昨日から右も変?食欲も少し低下してきた?(後で写真で見せて頂いた初期の左まぶたの腫れもかなり酷い)
■初診日:僕が診察できず直接確認していませんが、かなり両方のまぶたが腫れているので院内でステロイドを塗布して(家では怒るので無理そう)、抗生剤の内服をしてカラーで掻くのを防止して、1週後、となっています。目は大丈夫なのに程度が酷い・左から右に広がった?・原因不明・急に進行・食欲低下等が少し気になります。でも初期だと何の病気も良く分からない事は多々有ります。ですので、より大切なのは経過をマメに観察させて頂き、必要ならすぐに検査に入れる様に説明をする事だと思っています。


ただの眼瞼炎にしては腫れが・・・。

■5日後:食欲が半分になりました。元気無くよく寝ているとの事です。右足を痛そうに挙げるそうです。

悪化し、口周りにも・・・ 痛がっていた右手の肩には傷が有りました。外傷の可能性は有りますが、基本的には内部からでしょう。


よく見るとペニスの外側など、微妙に炎症を伴う部分が多発!

これはもう自己免疫疾患を初めとする特別な病気を考えないとダメそうです(参照:免疫介在性・自己免疫性疾患①や⑥、その他の⑦など)。そうなると皮膚生検は必須になります。普段なら局所麻酔で手早く・・・なのですが、残念ながら顔だと暴れたり出血したりとかで全身麻酔をしないと到底できません。

検査完了と同時にステロイドの大量投与をしました(先にすると病理検査結果が分からなくなる)。細かい病名はさておき、皮膚に加えて全身的に相当悪化していて、なるべく早期に治療をしたかったからです。ただしステロイドは「感染悪化のリスクがある」ので先行・並行で抗菌薬を投与しておく事も大切です。

病名として考えられるのは「エリテマトーデス・類上皮天疱瘡・薬疹・特殊な感染・その他自己免疫性疾患・若年性蜂窩織炎」等が有ります。どうせステロイドをするなら病名は何でも良いじゃないか!・・・と思われるかも知れませんが、病理検査は「感染の除外」「予後が悪い病気かどうか?」の判断に非常に大切です。今回の場合も、その結果に基づいて適切に薬の種類と量と期間を決められました。

病理検査結果は「中程度~重度の多発性肉芽腫/化膿性肉芽腫性皮膚炎」でした。色々と総合的に考えると「若年性蜂窩織炎(若年性無菌性肉芽腫性皮膚炎・若年性膿皮症・子犬の腺疫)」との診断でした。

若年性蜂窩織炎は多様な病名が与えられていますが、主に子犬に認められる顔面・耳介・リンパ節に肉芽性の炎症と膿疱を形成する稀な疾患です。原因は不明ですが、非常に若齢で発生し特定の犬種や血縁での発生が認められる為に何らかの遺伝的素因が有るとも言われます(実際に皮膚科認定医講習会でも先天性疾患としてレクチャーされます)。感染源は見つからず、他の個体に伝染する事も有りません。元気食欲の低下・関節炎・神経症状・疼痛なども認められます。

ただ、若年性蜂窩織炎は3週齢~4ヵ月が基本です。この子は1歳3か月で「この病気としては若くはありません」。しかも良くあるリンパ節の腫脹にも乏しく、発熱が無い・・・。ですので、見た目は本当に教科書の様に典型的なのですが、本当に?って感じでした(一応世界的には4歳が高齢の記録だそうです)。

治療はステロイドの大量投与で、劇的に良くなります。しかも段階を追って中止すれば完全に中止できます。この辺は別症例で紹介している自己免疫性疾患とは異なります(ステロイドでも治らなかったり、一生飲まないとダメだったり・・・)。自然治癒も有るみたいですが、全身症状も強く皮膚症状を起こした所は瘢痕化してしまうので、積極的な治療が推奨されます。


投与後1週:元気食欲が戻りました!症状の進行もストップして、段々と良くなっているのを感じます。

炎症は治まっても毛が生えるのか?まだ心配ですね・・・。


投与後3週:炎症が治まり発毛してきた感じがあります。

実は病理組織で毛包が有ったので生えるとは思っていました。


投与後5週:スッカリ元通りです!元々のすごく可愛いお顔が嬉しいです。最初はすごく怒っていましたが、あの時はきっとすごくしんどくて痛かったのでしょう・・・、もう診察でも待合でも大人しくて良い子にしてくれています♪


病気的に問題は無いと分かっているので段々と減薬して終了です。これもきちんと検査をして投薬をして下さったご家族のお蔭です!

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