< ゆう動物病院|京都市の皮膚科認定医 アトピー・難治の皮膚病対応
(その他の症例:17)知っているとすぐに特効薬です。 ネコちゃん ミックス オス 3歳10か月
■病歴:
猫エイズがあり、基本的には外猫さんです(本当は家から出さないで暮らすべきですが・・・)。この辺は今回の皮膚の病気には関係しているのでしょうか?

■初診時:

いつも口内炎で来院していますが、今回は「右足裏から血膿が出ている」との事で来院されました。

「外出しているのでどこかで怪我をしたのかな?」「エイズだし傷の治りにも要注意だね」と言う事で止血剤・消炎剤の他にインターフェロンや抗菌薬をして貰って帰られました。 初診時には血が出た足裏にはカサブタと小さな石ころが付着していたそうで、困った事にこれが診断を惑わせていました。石が刺さったのかな?・・・と。

さて抗菌薬を使用して2週間で治ったでしょうか?


全ての肢(足裏)の写真です。

傷は治ってきている様には思えますが、他の肢にも傷がありますし、何よりも全ての肢が腫れています・・・。

この腫れは写真では伝わり難いのですが、独特のグミみたいな波動性のある感じです。色も変です。恐らくは初診時から全部の肢は腫れていたはずで、これは知っていれば見ただけで診断がついたでしょう。今回は僕が診させて頂いたので、ちょっと痛そうですが傷の無い肉球そのものに針を刺して細胞診断をしました。
やっぱり・・・化膿性の炎症細胞と共に「形質細胞」らしきものが沢山出ています。これは最終的には組織を採ってきて「組織診断」をしないと確定は取れませんが、ほぼほぼ「形質細胞性足皮膚炎」で間違いないと思われます。

ですので早速特効薬を出します。一時期はステロイドを使っていましたが、使わなくても大丈夫です。ちなみに薬を使わなくても自然治癒する事も有りますが、出血している場合は治療を急いであげなくてはいけません!さて使って2週間・・・。


右足裏の肉球のアップ写真です。


左足裏の肉球のアップ写真です。

何だかしぼんできましたね。傷は順調に治っています。更に2週間・・・。


手の肉球のアップ写真です。


足の肉球のアップ写真です。

かなり良いですね!油断しないで、あと1か月は内服が必要ですが肉球の腫れもほぼ取れて、色も戻ってきました! (この後更に良くなったはずですが、良くなって来院しなくなって更にキレイな写真が撮れず・・・)

形質細胞性足皮膚炎は基本的にネコさんの病気です。皮膚症状は肉球のみに発生して、こんなに酷そうなのに「痒くない」「痛くない」ので気がつき難いです。ですが、ブヨブヨに膨らんだ肉球は破れやすくなりますので、そうなると出血して化膿して普通に傷として痛くなります。

今回は確かに初回は「傷」なんでしょうけど、根本の病気が診断できてないので完治せず悪化する事になっていました。この子が外に出るとか、出血部に石ころが付いていて診断が惑わされた部分もあるでしょう。

しかし、特徴的な柔らかい海綿状の腫脹(表面にシワができる)が変色(紫っぽくなる)を伴って出血している肉球以外にも出ているので診断は知っていると難しくありません。ちなみに一本肢だけに症状があれば外傷の他に肉芽腫や腫瘍も鑑別になります。また傷から感染するとリンパ節が腫れたりしてややこしく感じる場合もあります。

確定診断は培養による鑑別と組織診断ですが、通常は細胞診断(針生検)で充分です。血液検査でポリクローナガンモパチーと言うのを目安にする事もあります。

ちなみに原因は不明です。今回のこの子の様に「猫エイズ(FIV)」が一因になっている場合があるとも言われますが、他の免疫異常やアレルギー(特にノミ)、ヘルペスウイルス・カリシウイルス(風邪症状のウイルス」)が原因かも?と検討はされています。注意しなくてはならないのは形質細胞性の口内炎や糸球体腎炎や腎アミロイドーシスの併発です。今後もなるべく屋内で暮らさせてあげて注意は必要でしょう。ちなみにヒトには何もうつらないので安心して大丈夫です!