(腫瘍の症例:8)アトピーがあり、多発性の肥満細胞腫があり、そして指先には・・・ ワンちゃん パグ 初診時 5歳2か月 避妊メス

病歴:元々アトピー性皮膚炎で別の認定医の先生にご紹介頂いた子です。熱心に全ての検査・ケア等をして頂けるので皮膚は小康状態なのですが、1年半位前に肥満細胞腫が発生し、肛門の左横を大きく切除し検査をしました。肥満細胞腫のグレード(悪性度)診断としてはパグさんで多い「多発性」の比較的予後の良いタイプ(PatnaikⅠ・KiupelⅠ・C-kit全て陰性)だったので、それ以降に肥満細胞腫を見つけても基本的には積極的な抗ガン治療や手術はしないで、アトピーの管理と一石二鳥を期待してステロイドを間欠的に外用・内服して注意しながらケアしている子です。

症状:左手指先に赤い小結節を発見しました。元気一杯の子なので、外傷や二次的な感染の可能性もありますが、一番怖いのは肥満細胞腫の発生です・・・。どうも消えない感じですので、細胞診断をしました。


院内で見る限りは「組織球腫」と思えました。独立円形と言われますが、この手の腫瘍は「形質細胞腫」「リンパ腫」そして「肥満細胞腫」なども有りますので、念の為に病理医に診断して頂きました。結果、やはり細胞診断でも組織球腫との事でした。

これは若い子の手足先や頭部に多い「良性かつ自然消退する(ほっとけば消える)腫瘍」です。なので、内服も外用も不要ですし、もちろん手術も基本不要です。何も調べないで切るのは論外ですが、実は何も調べないで内服や外用をするのも自然消退の妨げになってしまいます!この腫瘍は炎症反応が起きて、その後に消失するからです。

ただし多発性の皮膚組織球腫やバーニーズに好発し寛解と悪化を繰り返す「全身性組織球症」や、同じくバーニーズやラブラドール等で認められる「組織球性肉腫群」などもあり、犬種や経過によっては要注意です!(実際にバーニーズさんであっという間に亡くなった子もいました・・・) さて困ったのは、この子はアトピーと多発性の肥満細胞腫の管理の両方を兼ねてステロイドを間欠的に投薬していた事です。元気が良くて、手先をすごくガリガリしてしまうのも気になります。さて無事に大人しく消えるのでしょうか?




・・・腫れています。この腫瘍は消える前に更に大きくなる事は特別珍しく無いのですが、手先なので擦ると血が出てしまうので非常に困ります。発見までのステロイドの使用もあり、3か月近く経過し増大一方で消退には時間が掛かり(または無理)で「待つ間も出血等で悩み、この子もご家族も心労の種でしかない」と判断してクライオ(凍結)療法をご提案しました。(通常は2~3か月内には自然消失するので放置します)

動いちゃうかも知れないのに無麻酔で指先に可能かのか?と言われると、「今までは難しかった」とお答えします。

ですが今はクールリニューアルがあります!


これは今までにないガスと方法で安全に凍結療法が行えるツールです。指先の様な敏感で繊細な場所では大活躍してくれます。従来の高圧ガスで深部まで凍らす方法も場合によっては有効ですので、この辺は使い分けのコツを熟知する事が大切です。

当院では早期から凍結療法に取り組んでおり、症例が豊富です。

大きいのと指先なので2回しましたが、2回目はより大人しくしてくれて、終了です。 むしろ爪切りの方が大変だったかも?位に大人しく賢くできました◎


元の皮膚病(アトピー)、元の腫瘍(多発性の肥満細胞腫)とその治療方法に配慮しつつ、今できた腫瘍(犬の皮膚組織球腫)の予後を考えつつ、更には実際に起きている悩み(擦って出血してしまう)をどう解決するか?
ただ疾患名や腫瘍名で抗ガンや手術や放置を選択しないで、より良い方法を考えてあげる事が皮膚科認定医の力量を試されると思っています。

それにはご家族がしっかり様子を見て、治療法を決断して、適切に看護してくれる事が必要なので、いつも今回の様な熱心なご家族と患者さんのご協力に感謝しています。

最後はスッカリ治った指先の写真です。色には影響しましたが、爪も問題なく生えてくれています。

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