(腫瘍の症例:9)何の腫瘍?取れる?取れても指ごと・・・? ネコちゃん MIX 初診時 5歳2か月 去勢オス

病歴: 今まで特に何もない健康な子です。
症状: 右の後ろ脚に1年半前からできた腫瘍です。病院では「借りてきた猫」そのもので平伏してじっとしているんですが、内弁慶君で家では足も見せてくれず、ついには大きな腫瘍になってしまったそうです。

近隣の病院では細胞診で血しか採れず、見た目にメラノーマ(黒色腫)として診断されています。それはチョット・・・少し乱暴ですね・・・。



右後肢です。ひとつかと思いきや・・・。


何と2個です! メラノーマ(黒色腫)と見た目で診断した先生のお気持ちは分かります。針生検をしても血しか取れませんし、色も真っ黒です。
メラノーマ(黒色腫)の鑑別はヒトでは皮膚科医の鑑別能力でも一番に磨くべき事だとお聞きした事があります。悪性が多いからでしょう。 ただ、犬や猫では爪や粘膜など特定の場所で無く皮膚であれば切除だけで良好な経過になる事が多いです。 ちなみにヒトでは細胞診断は禁忌だと聞いた事がありますが、犬猫では転移させるエビデンス(証拠)は有りません。それにしても、すっごく大きいです・・・よく気にして舐めずに歩けています。



しかも良く見ると下側にも広がっているのが透けて分かります。なるほど、これは取るなら指ごと?と思えても不思議ではありません。 実際に腫瘍を挟んで左右の指ごと取る方が楽そうです。

しかしながら、メラノーマ(黒色腫)が本当に怪しいのでしょうか?こういう時に活躍するのが皮膚科専用のダーモカメラです。



どうも黒いと言うより赤い気がします。何か血管系の腫瘍を疑わせます。困ったのは肉球ギリギリまで拡大すると病変が広がっていそうな点です・・・。

こういう時に安全性を優先して指ごと大きく切除するのが間違っているとは思いません。 ただ、経過も長いですし良性の方が疑えそうです。例えば血管腫とか・・・ですので再発のリスクをお伝えして、ギリギリの切除を提案しました。
悪性ならば改めて指ごと非常に悪性なら脚ごと切除したり、そして抗がん剤などのフォローも必要になる事もお伝えします。


自分自身が手術をされるなら機能を温存した手術をして欲しいので、ご提案してしまうのですが手術中は後悔する事も多いです(苦笑)。
この子も見た目以上に深部の広がりが凄くて苦労しました・・・肉球の所もギリギリですし、正直怖いです。

やっぱり肉球のところは癒合不全が少しできました。でも正直言いますと手先足先の手術では当院に限らず「舐めたり・ずれたり・感染したり」と上手に手術をしていてもトラブルが多い場所です。しかもマージンと言って正常な部分との距離も取り難いので再発も多くなります。


ちょっとだけ、癒合不全ができてしまいましたが、ご家族のお陰様で何とか大丈夫でした!
単純に見えますが、内側面はかなりの形成術をしています。


病理結果はやはりメラノーマ(黒色腫)ではなく「海綿状血管腫」でした。良性です。
ただ切除辺縁はギリギリ過ぎて再発の可能性は否定できません。

動物では「良性ですね。切除おめでとうございます!再発だけ気をつけましょう」で基本的には終わってしまいますが、ヒトでの海綿状血管腫と言うのは「静脈奇形」と同義語で一種の奇形です。青色ゴムまり様母斑症候群として加齢と共に増大して多臓器で発生する事があり、小腸で多発して出血によるトラブルや腸重積や失血死を引き起こす事も有る様子です。

今後は局所再発と同時に念の為に全身疾患に関しても注意すべき事を同時にお伝えしました。ヒトと動物では同じ病名でも全然意味が変わる事も有るので単純に一緒にはできませんが、両方の情報を調べて勉強する事は専門医や認定医の間ではしっかりと行われる事が多いです。

その後、抜糸が終わりご無沙汰になっていました。 便りが無いのは良い便り、ですが足を見せてくれない子みたいなので「どうなったかな~」と思っていたら、別の事で来てくれたので写真が撮れました!

8か月後ですのでヒトだと手術後3年位の感じです。




我ながらキレイで感動しました!こういう時には頑張って指を残して良かったなぁ・・・と、しみじみ思います。
ご家族の方は専門知識が豊富な方でしたので、術後の管理等もバッチリ頑張って頂けて、とても助かりました!ありがとうございます。

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