(その他の症例:22)脂漏症の分類はたまに悩みます

■ワンちゃん:

初診時3歳3か月 去勢雄

■病歴:

過去に胃腸炎が有った位です。若いですが皮膚病としては近医で1年2か月治療を続けているそうです。

熱心なご家族なので近医さんが勧めてくれた食事療法(セレクトスキンケア)やスキンケア(クレンジングもして保湿剤もして週2回している)やサプリ(アンチノール)も含めて色々と治療して貰っていますが、痒みは10段階で9とかなりの痒さで、大きなフケ(鱗屑)を伴って脱毛が広がっているみたいです。

■初診時:

なるほど、かなりの皮膚症状です。

頸部~肩にかけて「脱毛」「鱗屑(フケ)」が目立ちます。毛そのものも変色してしまっています。

頸部腹側(ノドの方)から肩にかけて

 

ちょっと分かり辛いですが、背部(肩)

 

そして大きな鱗屑が分かり易く映っている右肩です。 

症状が強いですが脱毛も鱗屑も原発疹でもあり続発疹でもありますので、そこからの病気の考察はちょっと難しいです

痒さに関して考えると相当に段階が高いので(9/10)教科書的に言うと「食事関係(アレルギー)」「疥癬ダニ」を鑑別にした方が良いと言う事になります。ただ、若い時(1歳位)からの症状ですので食事絡みを疑う事は必要ですが、その他からは余り食事関係を疑えそうにありません。ただし、こんな場合も「栄養学的な事を確認し」「食材は常に把握して頂いて、なるべく限られた蛋白源・炭水化物に絞っておく」事はして頂きます。一応は食事療法のコツをお伝えして、次に食べる候補はサンプルをお渡しします。

疥癬ダニに関しては最新の予防薬をきちんとされていて、検査からも否定されそうです。

ではこの子の皮膚病は何なのか?痒みにフォーカスするよりも非常に特徴的な大きく多い鱗屑にフォーカスしてみました。

何を疑うのか?は検査前は本来はフラットであるべきですが「勘」みたいな感じで「角化症(脂漏症)」じゃないかな?と言う気がしました。ひとまず鑑別で皮膚の基本の検査をします。クレンジングも含めて結構しっかりと洗っているのにマラセチアが多数検出されました。明確な基準は論争がありますが、一般的な病因とされるレベルの20倍弱のマラセチアを確認しました。

ですので「マラセチア増加」は痒みの原因の一つであり、皮膚症状の原因と言えそうです。

ただ、マラセチアは他の犬にも僕達にも普通に共存している為に今回の主因とは考えられません。副因(悪化させる要因)でしょう。もちろんコントロールが必要です。「正しく洗う(軽度ならマラセチア用のシャンプーで無くてもOK、むしろ長期乱用して皮膚が悪化するので注意)」「正しく保湿する」をします。内服としての抗真菌薬はまず必要ありません(たまに他院で出ていますが)!

マラセチアが悪さをしているとしても痒みの程度が酷いので更に以下の点を考えます。

① アトピー性皮膚炎からの続発性として脂漏症が起きている

② 現在のスキンケアによる「乾燥」「シャンプーの刺激」

さて①ですが「こんな時にはアポキル・ゼンレリアでしょ!」をこのHPをご覧の皆様は思われると思います。ですが、ご家族と相談の上で僕は一切しませんでした。この子は最初からステロイドです。そして同時並行で速やかに次の薬(シクロスポリン)に移行です。これは僕流では無く、恐らくは皮膚科を研鑽している皮膚科認定医もしくは専門医なら「だよね~」です。ここが認定医や専門医の差だと思っています。もちろんアポキル・ゼンレリア・サイトポイントは他の症例(普通のアトピーで症例で載せない場合とか)で大活躍して頂いて、足を向けては寝れません!

②に関してはまずはこのシャンプーでこの頻度、そして次からこれ・・・と正しい手段で行います。ここも差がありますが、一番差をつけないといけないのは「親切に伝える」事だと思っています。本来なら病院で実際に一緒に洗ってあげるべきなのですが・・・病院の都合やスペースでごめんなさい!ここは丁寧に各種ツールを使ってお伝えしています。

と言う訳で治療開始1か月です。マラセチアは問題無いレベルまで減少しました。ここからは入浴剤中心に切り替えです。痒みは10段階で9から1~2と激減していますが、皮膚はまだまだ・・・ですね。焦らないで大丈夫とお伝えします。

更に1か月です。

この間にお得な健康診断を使って念の為に内臓の検査と甲状腺の検査を済ませ(急いで調べないと心配な時以外は頃合いをみてお得な時に調べれば良いと思っています)、薬も順調に段階的に減らしています!

明らかに良くなっています!痒みも10段階で1です。でもちょっとフケとか更に減って欲しいですね・・・その辺僕も同じ気持ちです(苦笑)。ただ、薬やスキンケアは段階的にどんどんと減らしていますので、順調です。

さて更に2カ月経って、初診から4か月後・・・。

もう痒みは無いのですが、脱毛や鱗屑が解決して欲しいです。

頸部腹側(首のノド側)です!毛色も濃くなっています。すいません、ややピンボケですね・・・。

背中(肩)です。光が反射して色が・・・他の症例報告でもありましたね(苦笑)。いつも思うのですが、毛の色が黒くなると皮膚科のカメラって反射して上手に撮れないんですよね。でもかなり良くなったのが分かって頂けると思います!

右頸部から肩にかけてです。もうちょっと肩側を撮れ!って感じですが、非常に良い感じなのは分かるかと思います。

見た目がほぼ通常に戻ったら、色々な治療を段階的に止めてみる事もしています。

が、この子はこうなったら薬やスキンケアを完全に止めれるでしょうか?その可能性はありますが、恐らくは病気の主因や体質を考えれば現在の最低限のケアをコツコツと続けるのが一番安定すると思っています。そうなると何事もコツコツ継続は大変ですが、とても熱心で大切にして下さるご家族なので安心です。

最近当院では今後の長期的な事をお伝えする為にも最近は「皮膚科の診察メモ」をバージョンアップして従来のメモよりも色々と目に見える形でお伝えできる様にしました。良くなってからも「この後どうするの?」「ずっとこれするの?」「もっと良い方法は無いの?」などを一緒に相談して、その子その子のベストやベター(必ずしもベストが一番でも無いです)を相談できる皮膚科認定医でありたいと思って研鑽を積んでいます。